別掲の記事のように国際スペースガード財団(SGF)が本年3月21日に発足した。こ れを受けて各国にスペースガード協会(できれば財団)を設立するように要望されてい る。すでにSpaceguard Australiaが発足し、アメリカ、フランス等で検討されている。SG Fの評議員でもある磯部は、日本でも設立できないかと、松島弘一(航空宇宙技術研究 所)、吉川真(通信総合研究所)等と相談し、本年秋頃を目処に日本スペースガード協会 (Japan Spaceguard Association : JSGA)を発足させる準備をしようということになった。
そこでJSGAの活動目的、活動方法、組織などを検討し、準備するための準備会を発 足させ、まず十分な議論を済ませてからJSGAをスムーズにスタートさせたいと考え た。この準備会に参加して下さる方は松島までe-mail (matusima@nal.go.jp)かFax(0422- 42-0566)に申し込んでほしい。なお、準備会はできるだけe-mailで(それがない場合は Faxで)行いたいと思っている。
NEOに関する日本での活動
NEOに関する日本での活動は比較的新しい。小惑星を将来の資源として活用するため の勉強会が1990年頃からリモートセンシング技術センターの輿石肇を中心として開かれて いた。そして、それが発展したのが松島と小島が協力して出版(14号まで出版)してきた 小雑誌「あすてろいど」である。
一方、同じ頃、太陽系天体を研究していた磯部達がIAUにNEOWGが設立されたの を受けて1993年12月にNEOに関する国際会議を計画し始めた。1993年という年は、NE Oを考える上で重要な概念である「族」を平山清次が発見してから75年に当たる年であっ たので「Seventy-Five Years of HIRAYAMA Asteroid Families:The Role of Collision in Solar System History」というタイトルで開催することにした。この開催にあたり、輿石達のグ ループと天文学、惑星科学のグループが共同で年数回の研究会を持つようになり、国際会 議開催後も現在まで続いてきている。そして、昨年(1995年)の7月26日−28日に日本大 学八海山天文台(新潟県)で 合宿での研究会を開催した。 (その時発行した集録にまだ残 部があるので、入用の人は磯部、松島、吉川のいずれかに申し込んでほしい。)
観測面での活動は十分ではなかった。日本のアマチュア天文家は世界の研究者の天文台 に匹敵する小惑星の発見を行っている。しかし、残念ながら新小惑星の発見しやすい黄道 帯の観測が中心であったので、NEOの検出割合は小さかった。磯部は小望遠鏡にST− 6CCDを取り付けた観測を提案していたが、まだテスト観測を行っているレベルであ る。1996年2月からオーストラリアのD. Steelの所で観測をしていたDavid John Asherが日 本に来たので、4月から木曾観測所105cmシュミット望遠鏡での小惑星追尾観測を始め、 シーイング・サイズが3秒角と大きいにもかかわらず、20.6等級の地球近傍小惑星の観測 に成功した。この観測も望遠鏡の時間が十分に得られないので、なかなか進まないものと なっている。
一方、地球近傍小惑星の中には太陽周辺方向から地球に接近するものの割合が大きい。 これらは地上観測では検出できずに警告時間なしで地球衝突となり得るので、背景の空が 暗いスペースからの観測は不可欠である。このことを世界で初めて発表した磯部・吉川は 月面からの地球近傍小惑星検出の提案を始めている。
JSGAの目的
JSGAはSGFの支部の役割を果たすもので、その目的は本質的にはSGFの目的と ほとんど同じである。そしてSGFを支援して、資金的な援助までできるようになればベ ストの状態である。
このような目的を当初より実現することは不可能である。まず始めることは、JSGA さらにSGFの存在を知ってもらい、その活動の方向を支援してもらうことである。その ためには、多くの人々にNEOに関して知ってもらわねばならない。幸い、すでに私達に は「あすてろいど」という雑誌があるので、これを拡充し、また時代に合ったWorld Wide Webを開設することであろう。そして、より多くの会員を得た段階で、協会としての活動 を軌道に乗せ、より発展できれば各方面からの十分な寄付を得て日本スペース・ガード財 団(JSGF)にまで到達したいと考えている。
このような流れと目的を多くの方が理解して下さり、JSGAの準備や設立後の会に積 極的に参加していただければ幸いである。