最近発見された小惑星   最近発見された小惑星

 ここのところ、いろいろ変わった軌道の小惑星の発見が相次いでいる。今年になってからのMPEC(Minor Planet Electronic Circular:電子メールで小惑星や彗星の情報を伝える回報)の記事を中心にして、面白そうな小惑星を拾い上げてみよう。
 まずは、何と言っても日本の木曾観測所(東京大学理学部天文学研究教育セター所属)で、今年の1月16日に発見された小惑星から紹介しよう。これは、1997BQという仮符号が付いた小惑星であり、アポロ型の特異小惑星である。アポロ型の小惑星というのは、地球の軌道に接近する可能性があるもので、今年の3月初めには地球に0.18天文単位の距離まで接近した。小惑星の発見というものは珍しくはないが、このように地球に接近するものの発見はどちらかというと希である。発見は、木曾観測所の研究員である長谷川隆氏によってなされた。長谷川氏に、どのような状況下で発見したのか、どのような観測を行っていたのか、そして、それが特異小惑星だと分かったときどう思ったか、といったことを聞いてみた。すると、
  「明らかに偶然ですねえ。」
  「暗い銀河の探査。」
  「意外でした。」
というシンプルな回答が返ってきた。そう、長谷川氏は小惑星の研究者ではないのだ。意図していなかったところに発見がある。
 地球に接近して発見された小惑星としては、2月9日にキットピークで発見された1997CD17という小惑星がある。この小惑星は、発見時に地球から0.0074天文単位(約110万km)まで接近していた。また、1月20日に発見された1997BRという小惑星は、今年の7月13日に地球に0.080天文単位まで接近する。さらに、軌道長半径が地球の軌道よりも小さな小惑星も見つかっている。これは、1月20日に発見された1997AC11という小惑星で、軌道長半径が0.914天文単位である。
 このように地球軌道近辺にある小惑星とは対照的に、軌道が大きな小惑星も続々発見されている。2月15日にキットピークで発見された小惑星1997CU26は、軌道長半径が13.7天文単位である。つまり、土星軌道と天王星軌道の間にあることになる。これは、小惑星の確定番号として2060番がついているキロンという天体と似た軌道になる。さらに、より大きな軌道の小惑星についても報告がいくつかなされている。いずれも発見は昨年であるが、1996TL66という天体が軌道長半径が83.4天文単位、1996RQ20が47.4天文単位、そして、1996TK66という天体が42.5天文単位とのことだ。このような天体はカイパーベルト天体と呼ばれており、最近、注目を集めている。


 最後にちょっと変わり種の小惑星として、1997DFという2月26日に発見されたものがある。この軌道長半径は1.54天文単位であるが、これは火星の軌道長半径にほぼ等しい。つまり、これは火星のトロヤ群小惑星の可能性があるということである。トロヤ群小惑星というのは、木星の場合に有名であるが、木星軌道上で木星の前後に分布している小惑星のことで、太陽−木星−小惑星がほぼ正三角形をなすような位置にある。小惑星1997DFは、火星についてこのトロヤ群と似たような軌道にある可能性があると言うのだ。火星のトロヤ群小惑星としては、5261番のEurekaという小惑星がある。
 このように、最近、変わった軌道にある小惑星の発見が相次いだ。
もちろん、「普通」の軌道にある小惑星も数多く発見されているわけであり、太陽系はますますにぎやかになってきた。

[謝辞:小惑星については、MPEC以外に国立天文台の平山智啓氏および佐藤勲氏の電子メールによる情報を参考にさせていただきました。また、木曾天文台の長谷川隆氏には、忙しい中電子メールで対応していただきました。]
          (吉川 真 1997年3月11日:海の季節が間近のニースより)



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