暑く、且つたびかさなる台風の襲来で変化に富んだ今年の夏もおわり、すっかり秋めいてきました。東京、調布から信州に移った編集室の窓からは、真っ赤になったななかまどの実が、木々の紅葉をうながしているように見えます。「あすてろいど」と一緒にこの少しひんやりとした、何とも言えないすがすがしい初秋の風をお送りできるとよいのですが。
ところで、この号からレイアウトを少し変更しました。目的はページ数を最大16ページ程度に押さえたいというためです。主な理由は経費削減にあります。少し字は小さくなりますが、読み易さには極力心がけたつもりです。それでも、もし読み難く感じたりしたときはぜひご意見をお聞かせ下さい。
今月のイメージではシューメーカー先生を取り上げました。今年の7月、オーストラリアでの交通事故による突然の死には本当にびっくりしました。クレーター調査のため滞在中とのこと、同乗していた奥様は怪我はされたものの無事ということでした。NEOに関する関心も少しづつ高まりつつあり、今後の活躍に期待を寄せられていました。大変に残念ですが、ご冥福をお祈りさせて頂きます。
今年の夏、JSGAでは大阪、名古屋、東京での講演会を企画しました。そのアレンジから講演会運営まで、全般にわたって奮闘された磯部会長にその報告を書いていただきました。どの会場でも大変活発な質疑応答が見られたということで、まずまずの成功でした。開催にご協力頂いた方々に心よりお礼を申し上げます。
歌島さんの宇宙望遠鏡によるNEO検出のシミュレーションは、太陽−地球系のL4点に配置した望遠鏡からの観測で、現在軌道のわかっている407個の小惑星を発見して軌道決定まで行うとすると何年かかるか、という問題です。前回(19号)は407個がとりあえず一瞬でも観測にかかるのに30年という話でした。今回は軌道決定に必要な観測という条件のもとでは、その99%検出に70年かかるという結果です。観測にかかりにくいNEOへの対応、数十万個あるといわれるNEO検出など、今後の研究の発展に期待したいと思います。
吉川さんの「ところ変われば・・・」はいかがでしょうか。日常生活に見られるフランスの特徴を、読みやすい文章で、簡潔且つ明解に伝えています。例えばバスの運転手の話など、のどかな情景がありありと浮かんできます。吉川さんは今年いっぱいはフランスに滞在される予定です。したがって次の号でもう一回ニースからのお話を聞かせて、いや読ませて頂けると思います。
長谷川さんの「1997BQ、 汝はメフィストフェレスではなかったのか」は、木曽観測所のシュミット望遠鏡による特異小惑星発見のいきさつを紹介していただきました。小惑星探索にはあまり経験のなかった筆者が、観測画像の中に思いがけず写った奇異な天体像と格闘していく有り様を、客観的、且つ名文で綴っていて、思わず引き込まれます。カクテルしまうまの味はいかがなものでしたか。その教養と卓越した文章力を生かした次のエッセイをぜひ期待いたします。
歴史に残る気候変動と文明衰亡の事件を辿る古宇田さんの「衝突と気候変動、及び絶滅と文明盛衰」は2回目で、エーゲ海に見るアトランティス伝説とミノア文明滅亡のお話です。正しいリスク管理のためには、正しいリスク認識が普及する必要があるというということは同感です。一言つけ加えると、正しいリスク認識には、自然界の現象の多くは人間など到底及ばない、強大な力を持っているのだ、という謙虚な恐れを根底に置いておくことが必要であると思います。 (写真は美ケ原 松島)