スペースガード協会 夏の講演会から

                     磯部 秀三(国立天文台)


 日本スペースガー協会では、昨年10月20日の発足時に地球衝突小惑星問題に関係する講演会を開催した。本年の夏には、国際天文学連合総会が京都で開催され、それに出席するために国際スペースガード財団会長Andrea Carusi氏とスペースウォッチ望遠鏡で小惑星検出を続けてるTom Gehrels 氏が来日している時に合わせて、一般向けの公開講演会を3日続けて開催した。

 8月30日(土)には、大阪毎日ホールで午後1時から4時まで行った。大阪駅に近く交通の便もよく、また、共同主催者である毎日新聞大阪支社が7月末に一面広告をしてくれ、大阪市立科学館が積極的に呼びかけてくれたので、満員に近い350名ほどの人が来てくれた。毎日新聞社側で作った台本にしたがって、まず、国際スペース・ガード財団会長が挨拶を兼ねて、なぜこのような会を作って努力しているかを簡単に説明した。そして、ビデオにより太陽系の紹介と、小惑星の飛び交う空間を移動して、小惑星がどこにあり、どのようなものかを理解してもらうようにした。次に、これからの観測にとって重要な遠隔地からの望遠鏡の操作を行う実験をNTTの寺子屋システムを使って行い、聴衆の関心を高めていった。

 (満員の毎日ホールで挨拶するAndrea Carusi氏)

 その後、大阪市立科学館の加藤賢二氏の司会で、輿石肇氏、磯部秀三氏、Tom Gehrels氏によるパネル討論があった。6500年前の恐竜の絶滅、被害の大きさ、望遠鏡による観測と軌道決定、安全であるために必要なコストなどに関して意見が述べられた。聴衆との間の質疑応答にほんの少ししか時間がとれなかったのは少々残念であったが、十分な内容であったと思える。最後に抽選による賞品の授与があり、多くの人が喜んで帰っていただけたと思う。

 8月31日(月)は、名古屋市立科学館のホールで午後2時から5時まで行われた。この時も満員ではなかったが、250人あまりの人が来られ、最後までほとんど帰る人もなく聞いてもらえた。今回はCarusi氏、Gehrels氏がそれぞれ通訳の時間を含めて40分ずつ話をした。科学館館長の樋口敬二氏に最初の挨拶をしていただき、歓迎の意を示して下さった。Carusi氏は主に理論的な立場から衝突の可能性を話し、Gehrels氏は、観測による検出方法について解説した。休憩後、磯部氏が30分間で衝突を防ぐという安全を確保するために必要なコストを評価し、この問題に人類としてどう対応するべきかの議論をした。

 その後、40分あまりの質疑応答があった。時間が十分にあったので、聴衆はいろいろな疑問をぶつけることができ、大成功であったと言える。会の様子は中日新聞が記事にして下さっている。

 (名古屋市科学館で質問を受ける、左からCarusi、磯部、Gehrelsの三氏)

 9月1日(月)は、東京の五島プラネタリウムで行った。ウィークデーなので、午後6時半から9時までにしたが、宣伝も十分でなかったこともあって、残念ながら参加者は80名足らずであった。講演内容は前日とほぼ同じであった。そして、同様に質疑応答の時間がかなりとられ、かなり理解してもらうことができた。東京であるので、日本スペースガード協会の運営委員も5人かけつけてもらえた。この講演会は、読売新聞社の後援を得ていたので、会の前後で、関連記事を掲載していただいた。

 3回で、約700人に聞いていただいたことになる。また、会員になって下さった方もあり、あすてろいどの総集編を買っていただいた方もあり、協会の資金面でも若干のプラスになった。さらに、多くの人が問題点をかなり理解して下さったことはより大きなプラスであった。今回の公開講演会を開催するに当たっては、多くの方々が積極的に協力して下さった。特に各会場で準備に当たって下さった方々のお力添えは大きなものであった。この成功を機に、今後もこのような公開講演会を積極的に開いていきたいと思うが、協会の運営委員の力だけでは実現が難しい。多くの賛同者の御協力を得て、一つ一つ実現していきたいと思う。

(五島プラネタリウムに集まった運営委員と講師。左からCarusi、小島、歌島、磯部、松島、Gehrels各氏)


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