編集室から 


 日本が参加することで大変に身近なものになったサッカーのワールドカップは、サッカーというスポーツが持つ面白さと、社会的な重みを実感させてくれました。早朝に、深夜にと目をこすりながら見始める中継も、いつのまにか引き込まれて終わった後は何とも言えない充実感があります。野球とともに育った人間には、一瞬たりとも目を離せない緊張感と興奮の連続、審判の絶対的権威、ゲームの流れを優先して中断する時間を極力抑える進行は実にさわやかでした。日本チームは残念ながら一勝もできませんでした。かつて名古屋グランパスエイトの監督であったベンゲルはその名著「勝者のエスプリ」の中で「小倉も敵がいなければストイコビッチなのだが」と言っていました。日本選手は技術だけは対戦相手にひけを取らないように見えます。ただ状況に応じた瞬時の適応能力や自発的、かつユニークな局面打開といって面ではまだ及ばないところなのでしょうか。しかしそれがないと試合には勝てないし、見ていても面白いゲームにはなりません。これは不況打開にもたつく日本政府にも共通することで・・・。などと偉そうなことをいうものの、実は筆者自身がそのことを日頃いつも痛感していることなのですが。いずれにしても何も知らないくせに人の受け売りをする、にわか評論家を日本中に誕生させたのもワールドカップの功績?でした。

 訳の分からない前置きが長くなりましたが、「あすてろいど23号」をお届けします。この号から印刷を長野県上田市で行うことになりました。編集室が印刷所と直結することで今後は編集の仕方も少し変わっていくかもしれません。

 NEOと宇宙デブリの専用観測施設の建設計画がスタートしました。光学観測施設は口径1m及び0.5mの望遠鏡からなり、対象とするのは主として直径1km以上のNEO、直径50cm以上の静止軌道上のデブリです。11月には製作の入札が行われ、2001年度初めには完成するということです。実際にこのような計画が進む中で、スペースガード協会としてどのような対応をしていくか、各会員の皆様もぜひ考えて頂きたいと思います。

 映画「ディープ・インパクト」の公開に関連して、それに関連する記事が多くなりました。ただ映画はあくまで楽しむために作られるのであり、本来の主題は「避けがたい死の時期が明確に迫ってくるとき、人間はどう生きるのか」というようなところにあるようです。天体衝突はそのようなストーリー展開の舞台設定にはうってつけのものであるかも知れません。ところでこの映画のホームページにリンクされていた「SpaceViews」の7月3日号に「新しいタイプの近地球小惑星発見」というニュースがありました。ハワイ大学のD.TholenとR.Whiteleyが今年の2月に発見した小惑星1998DK36は太陽からの距離が地球よりも遠くなることはない、というものです。これは衝の位置で見るわけにいかないので、地球からの観測が極めて難しいタイプの小惑星です。磯部さんや吉川さんがその危険性を提唱されている、「太陽方向から接近するNEO」というものでしょう。まだ正確な軌道はわかっていないようですが、地球と水星の間にあるらしいということです。したがって運が良ければ夜明けか夕方の空にその姿を垣間見ることができるというようなものです。今回の発見もマウナケア山にあるハワイ大学の2.2mの望遠鏡で、そのような時刻の探索で見つかったようです。

 話しが脱線して記事の紹介がほとんどできなくなりました。歌島さんには4回にわたってNEOの観測シミュレーションについての研究報告を掲載していただきました。現在の進歩したパソコンでは比較的容易にこのようなシミュレーションが可能であると思います。これを参考にされて読者の方々も独自のシミュレーションを試みられてはいかがでしょうか。その際にはぜひ歌島さんにコンタクト下さい。

 古宇田さんの「衝突と気候変動・・・」は大変おもしろくなってきました。地質調査と称して世界中の、一般の人の行かないところを探索されている日頃の蓄積が溢れてくるようです。また渡辺さんの「藤兵衛の望遠鏡」も佳境に入ってきました。調査チームの活動の様子が目に浮かんできます。最後に読者の方々からの投書をお待ちしています。記事の内容について感想をお寄せ下さい。またJSGAの活動についての提案も歓迎いたします。   

              (写真はメキシコ、サンホセデルカーポ  松島)


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