磯部 秀三(国立天文台)
まず、副会長の中野主一さんがまとめて下さった表を見てみよう。
表1.各月の小惑星観測回数
締め切り日 観測回数 ------------------------------------- 1997-01-22 16,105 1997-02-20 14,703 1997-03-17 10,764 1997-04-23 22,737 1997-05-21 16,880 1997-06-18 8,660 1997-07-17 11,366 1997-08-15 10,538 1997-09-17 12,490 1997-10-16 17,419 1997-11-13 19,848 1997-12-10 17,983 1998-01-14 25,678 1998-02-11 25,838 1998-03-11 23,477 1998-04-09 52,215 1998-05-08 66,511 1998-06-11 90,942 ----------------------------------- 464,154 |
ここですぐに気づくのは、今年3月以降に小惑星観測回数が急激に増えていることである。この大部分は、アメリカ・ニューメキシコ州・ホワイト・サンズ・ミサイル基地にあるリンカーン研究所地球近傍小惑星探査望遠鏡(LINEAR)が稼働し始めたからである。1998年4月だけで、35,417回の観測である。4月5月で、81,768回の観測で、80,301個の小惑星を観測し、そのうち、3,646個の新小惑星を発見した。
この望遠鏡は、ハワイのハレアカラの地球近傍小惑星望遠鏡(NEAT)と同じようにアメリカ空軍が人工衛星追跡用に建設したものに、4,000×4,000ピクセルのCCDを新たに取り付けてNEO観測用にしたものである。口径は1mで、F/2で、視野は1.6度である。リンカーン研究所は独自にCCDを作っており、CCDの読み出し速度をこれまでのものより10倍以上早くすることに成功している。そのため、限界等級を少々犠牲にして、20秒以下の露出時間で、19.5等級まで検出している(シーイングにより条件が
変わり、20.5等級の小惑星の検出例はある)。このため、同じ4,000×4,000のCCDを使っているにも関わらず、NEATよりLINEARの方がはるかに観測数が多くなっている。
NEATは、まだ人工衛星の観測用にも使われているので、1カ月に6夜しか観測できなく、LINEARに比べて自身の望遠鏡による追跡観測を順調に進められないでいる。それでも1995年の観測開始以来、1998年5月まで、のべ25,000個の小惑星を観測している。30個のNEO、2個の長周期彗星の検出に成功している。
1989年から活躍しているスペースウォッチ望遠鏡(SWT)は、視野が狭い(30分角×30分角)。ドリフト・スキャンという新しいCCDの駆動方式を開発し、NEOの検出数を急速に増大させ、1996年までの全NEO数を400個にするのに大いに貢献した。1998年5月現在では501個となっている。SWTに加えて、NEAT、LINEARの活躍が大いに貢献するようになった。
LINEARが動き出すまでは、1km以上のNEOを90%検出するのに100年、95%では200年と言われていたが、LINEARの参入により、90%で50年、95%で100年と大幅に短縮された。日本の望遠鏡の完成により、これをさらに半減したいものである。また、20年以内に99%検出するために、LINEARクラスの望遠鏡があと10台必要である。これはアメリカや日本ばかりでなく、世界の協力で進めなければならないことである。