加 藤 公 子
夏の暑い盛りに旅行スタイルで駅に向かう時、「どちらへ?」と問いかけられてちょっと気取り、「北軽井沢の別荘(?)へ」という私の返事は、とても優雅なバカンスを想像させるけれど、どういたしまして実は3泊4日の合宿研修なのです。 行く先は確かに浅間の噴煙が見える北軽井沢の高原、平地の蒸し暑さをのがれ、新鮮な地場野菜がたつぷり食べられる別天地で、女性としては三度の食事の支度からも解放されますが、昼間は天文学の講義がぎっしり、夜は天体観望のスケジュールが決まっています。
これは北軽井沢駿台天文台で毎夏開かれる天文講座のことで、東京王子の駿台学園天文講座の受講者や、科学雑誌の催し物お知らせで見た人、あるいは地元の人などなど、毎年続けてのの参加者も数多くいます。第15回を迎えた今年は、高校生から軍隊経験を持つ大正生まれの方までの、広い年齢層の20余名が遠くは関西から集まりました。数回の参加経験を持つ私は、広い芝生のさきに連なる白亜の宿泊棟を勝手に“別荘”と呼ばせて頂いています。ここには75p反射望遠鏡があって、光害のひどい都市部では見にくい暗い天体を観望できます。お盆の帰省や家族旅行をする人の多いこの時期に、いろいろの日程を調整してここへ集まる人達は、それぞれの知識の量に多少はあっても、いずれ劣らぬ熱心な天文愛好者ばかり、高校生たちの中には、東京大学木曽観測所で先日行われた「銀河学校」に参加した人もいて、ほかに高校の天文部の顧問の先生や、元教師だった年輩の人、グレオリオ暦の改良を提案する猛者(?)もいます。
今年の講師のお一人は、JSGA会長の磯部先生で、映画ディープインパクトの公開にあわせてか、小惑星をテーマに5時間の講義を聞きました。その内容は星間分子雲がどういう状態で収縮を始めて太陽系を形成したかに始まって、地球に近づく小惑星がどうしてそのような軌道を持ったのか、それはどんな軌道でその数はいくつぐらいあるのか、地上にあるクレーター、中でも有名なユタカン半島のチクシェループクレーター発見のいきさつ、またそれらの小惑星の検出観測の方法、月面に設置するものを含めどんな望遠鏡の建設がが計画されているか等についてでした。
これらの詳しいことについては、前夜の天体観望の夜更かしのため、寝不足頭で筆記した私のノートを写すよりも、「あすてろいど」紙のバツクナンバーやJSGA発行または推薦の書籍に詳しく正確に掲載されていますから、そちらをご覧頂きたいと思います。
75p反射望遠鏡を使っての天体観望は参加者の大きな楽しみですが、今年は天候に恵まれず雲が広がることが多く、また月明にも邪魔されてあまり充実したものにはなりませんでした。それでも縞模様の見える木星とガリレオ衛星や、環の面から遠くポツンと離れたところに浮かぶ衛星タイタンを従えた土星、球状星団M13等を覗きました。
閉講のご挨拶では磯部先生から「小惑星の衝突に気を付けてお帰り下さい」といわれ、一同喝采いたしました。
この夏季天文講座、並びに東京王子の駿台学園で、毎月第三土曜日夕方に開催の天文講座に関心おありの方は、同学園の天文台担当の篠原先生にご照会下さい。( 〒114-0002 東京都北区王子6-1-10 03-3913-5735)
会員番号204 加 藤 公 子
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