JSGAスペースミッションの意義について

                       月面・軌道上望遠鏡検討委員会
                       委員長 浅井 義彦(東日本国際大学)


 月面・軌道上望遠鏡検討委員会では「セレーネ計画において月面NEO望遠鏡を実現させること」「軌道上望遠鏡(SGST :Space Guard Space Telescope)の提案に向けて基礎研究を進めること」の二つの研究を柱として、宇宙からの観測の優位性についての検討、ミッションの相互関連、データ処理、通信、運用解析などについての概念設計に着手する段階を迎えている。

 システムの設計において最初に必要とされるものは、ミッションの役割・位置づけ・目標といった根本的な存在意義を明確にすることである。これは、単に対外的な説明のために必要であるばかりでなく、「何故、私達は望遠鏡を宇宙に持ち出すのか?」という根本的な問い掛けに答えておくことで、今後に予想される複雑で錯綜した開発作業の中で、様々な障害や困難や混乱や怠惰に立ち向かいながら本来の目標を見失わないために、私達自身に対する明確な指標を確認しておくことが必要だからである。

 現在のところ私達は、前述のNEO検出を目標とした宇宙ミッションを、私達が今まで経験してきた幾つかの宇宙ミッションに習い、世の中で提案されている多くのミッションと同様の手順で、計画し、提案する準備を進めようとしている。勿論、その第一の理由は、ミッションを成功させる為の手法というものは、目的がNEO観測であるか資源探査であるか等に関わらず有効だからであるが、第二には、私達が実現させなければならないミッションが、私達JSGAのメンバーだけでなく宇宙開発に携わる数多くの人々の協力なしには実現不可能なものであるにも関わらず、未だ多くの人達がJSGAの意図や意義について充分な理解を有していないという状況にあり、現時点での彼等にとっては、JSGAのミッションも数多くのミッションのひとつにしかすぎないからである。(あらゆる人達を説得するのは、全ての小惑星を検出するより困難である。)

 従って、私達は、一般的なミッション提案に要求される、「科学的な成果として何が得られるのか?」「新規性は何か?」「有用性は何か?」「経済的なメリットはあるのか?」「コストパフォーマンスは考えているのか?」…等といった、様々な立場からの基準を満たしながらミッションを立案し、提案して行かなければならない。しかしながら、ミッションの存在意義を社会的に認知させる為に、過去に実現されたミッションが満たしてきた要件を私達のミッションも兼備する必要があるということを確認すると同時に、私達のミッションの有する、他のミッションとは本質的に異なる存在意義について再確認しておくことも重要である。

 それは、私達のミッションが、私達の所属する組織や地域や社会や時代といったコミュニティにおいて過去に作り上げられた様々な基準によって価値を認められることが無いとしても、私達は計画を進めることをやめない、ということによって体現される筈である。さらにそれは、私達のミッションの本質的な価値が、現代の経済社会の基準や職場の上司によって与えられるものではなく、未来に対する責任によって与えられるものだからであり、私達のミッションが未来にとって必要であるという最も本質的な存在意義を、私達自身が自覚しているからである。

 かつて、地球生命は地球環境から離脱することができず、かりに閉鎖系としての地球環境そのものが根底から壊滅的打撃を受けることが理解できたとしても、それを回避する術を持たなかった。しかし、私達人類は、その危機を理解し、その危機を回避するために、宇宙へ出る術を知っているのである。成すべき事がある時、それを理解し遂行する能力を有する者達にこそ責任があるとすれば、私達の同胞である全ての生命の中で、唯一、私達人類のみがそれを遂行し得るのであり、人類の果たすべき責任を自覚することを前提としてJSGAが設立されているのである。

 このNPO活動としてのミッションの特徴こそが、地球生命の未来を確保するというJSGAの存在意義と並んで、新しい宇宙開発システムや、来るべき地球規模システムの先駆けとなる、JSGAのミッション固有の存在意義なのである。会員の方々は、JSGAの会員であることによって、さらに積極的に、私達のミッションを成功させるための活動に参加することによって、未来を確保し、その未来に対して、単なる知識ではない、生き様としてのメッセージを伝えることに参加して頂きたい。

委員会への意見、委員への立候補は下記のメールアドレスまでお願いいたします。
asai@tonichi-kokusai-u.ac.jp


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