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超高感度 CCD Video Camera 試用記
渡辺文雄(上田市教育委員会)
つい最近5月に入ってから従来では考えられなかった超高感度ともいえるビデオカメラが発売されたため、早速これを購入して天文用にテストした結果について概要をリポートする。
ことの起こりは昨年12月頃、上京した折にいつもの様に秋葉原を散策していたことにさかのぼる。たまたまラジオ商街のとある一軒で工業用ビデオカメラ「監視カメラ?」を沢山置いているお店の方と・・実は超高感度のビデオカメラを探している、用途は天体望遠鏡につけてビデオ観測用に使いたいので、従来の高感度というのでは使い物にならない・・(高感度と言えば蓄積タイプのCCD Video Camera、Image-Intensifier、冷却CCD等があるが、時間分解能を稼ぐためにはビデオレートの映像出力が欲しいというのが私の考え方である)・・というようなことを喋った訳である。このときに幸いといおうか、お店の方が天文に興味があって自分でも「ミードの20cmシュミットカセグレン」を持っていてたまには夜空を覗いて楽しんでいる・・という人で、話はすぐに通じた。このときに聞いた話では来年の3月頃には、今まで考えられない高感度のビデオカメラが発売されるというのである。早速自分の住所を伝えて発売になったら是非連絡してほしい旨を伝えて帰った来た。これが期待を違わず今回リポートする超高感度ビデオカメラとの出会いの発端である。
結局発売は随分遅れて、今年の5月の半ば頃になった。私は6月7日に航空宇宙技術研究所に出張の予定があったため、前日の6日に秋葉原へ出かけてようやくこのカメラを入手することができた。こうなると一刻も早くテストしたいものであるが、この晩は東京泊りでどうにもならず、7日に上田に帰って取り敢えずカメラ用の105mm
F1.8のレンズをこのビデオカメラに取り付けて夜空に向けてやると、なんと天の川の明るい星が幾つも映っている。これは話し以上かもしれないと期待しながらもこの日は帰ったのが遅かったため終りにした。天候との関係でテストは9日になって行うことができた。この夜のテストは、10cm
F8屈折、28cm F10シュミットカセグレン、40cm F6ニュートンの3種類の光学系で行った。しかしながら今回は時間的な制約もあり、定量的なテストにはなっていない。今後数値的にこのビデオカメラの感度についてテストした結果については次号以降で紹介したいと考えている。
まず、10cm屈折の直焦点での撮影では、撮影の限界等級が約10等星位である、これは従来の高感度ビデオカメラとの比較では桁違いの高感度である。ちなみにこの光学系でほぼ10等星が写るということは、人間の目で見るのに近い感度を持っているといえそうである。ただしこれは恒星像のことであって、拡散天体(ガス状天体、銀河等)ではやはり人間の目の方が感度が有りそうである。次に28cmシュミットカセグレンではどうか、これもやはりかなり写っている。恒星像での限界等級では13等星近く写っているようである、ちなみに明るい星団(M3、M5、M11、M13等)は淡いながら写っている。最後の40cmニュートンでは更に限界等級が上がって恒星像では14等星を優に超えていると思われる、そのうえこのカメラを取り付けたまま望遠鏡を振って行くと、なにやら淡い天体がスーとモニターを横切った。ストップ思わず赤道儀を操作していた友人にどなって、星図の出ているパソコンを覗くとどうやらM57が視野を横切ったと思われた、改めてM57に望遠鏡を振ってゆくと紛れもなくお馴染みのリング状天体が視野の右側から入って来て写っている。星雲ではかなり輝度が高いとはいえImage-Intensifier以外で映像モニターを見ながら天体の導入ができたのは今回が初めてである。この感度はたぶんSIT
Cameraに匹敵するかもしれない。さすがに中心星は写っていないが、これはImage-Intensifierでも蓄積をかけないと写らないことを考えれば当然のことである。がダークノイズの点で言えばむしろこのCCD
Cameraの方が上だろう。最近でこそあまりSITとは言わなくなったが、10年前だと新品の価格で500~600万円はするといわれたSIT
Cameraと価格的には比べ物にならない。この後更に暗い星雲の導入を試みたが写る天体はなかった。可能性としてはM104ソンブレロ星雲が写るかもしれないがこの夜は南の低空は雲がベッタリであった。その後星団を幾つか導入してみた。M3、M5、M10、M11、M12、M13、M18、次々とモニターに入ってくる天体像を見ながら、さしずめテレビによるメシエマラソンの雰囲気である。
さて、定性的にはこの程度の感度を持った工業用CCD Cameraであるが、メーカーが付けている仕様書からこのカメラの性能を紹介すると、電源は12V直流、感度はF1.4の光学系で最低被写体照度は0.0003ルックス、出力75Ω 1V P-P、光学系のマウントは基本的にはCSマウントであるが、標準でCマウントリングが付属している、NTSC/PALどちらにも対応したカメラを製作しているようである。
従来の超高感度なCCD Cameraといわれたものが、最低被写体照度0.05ルックス程度であることを考えると桁違いに高感度CCD Video Cameraといえそうである。メーカーはWATECという、非常に小型の工業用CCD VIDEO Cameraの製作が得意な会社である。ちなみに価格は、定価で128.000円なりということであるが、天文の愛好者の場合は若干値引きしてくれるとのことである。実際の撮影画像はできれば「あすてろいど」のインターネット版でご覧いただけるようにしたいと思っている。
註1 Videoの場合は1/30secまでの時間分解能が簡単に得られるため恒星食、高速移動天体、彗星流星等の観測では最も有効な観測手段であると考えている。
註2 アメリカのアマチュア向けの望遠鏡メーカーの製品。
註3 天文雑誌社等が主催したりするが、決められた時間内に幾つのメシエ天体を見れるかのゲーム感覚の観望会とでもいったら良いだろうか、競技的な要素が多分にある。最近は天文関係のイベント等でもおこなわれている。
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