公開講演会報告(2) |
宮崎のモアイ
−宮崎科学技術館での公開講演会報告−
吉川 真(宇宙科学研究所)
去る5月16日に、宮崎市の宮崎科学技術館で天文講演会がありました。これは、宮崎県天文協会の主催の天文講演会ですが、日本スペースガード協会との共催の講演会で、私がお話をさせていただきました。講演のタイトルは「天体の地球衝突は本当に起こるか−天体衝突とその探査の現状−」というものです。 科学技術館や天文協会の皆さんの熱心な宣伝もあって、当日は120名ほどの方が講演を聴きにいらっしゃいました。講演はプラネタリウムのドームで行われたのですが、衝撃的だったのは講演のオープニング。正面のスクリーンには、何もない砂漠を背景として、飛行していく彗星が映し出され、次の瞬間にはごう音とともに地面に激突。そして、その跡 オープニングの後は、90分間ほどスライドとビデオを交えながらお話をさせていただきました。オープニングがバリンジャー隕石孔でしたので、まずはそこに行ったときのことから始めて、地球に衝突した天体の記録や、シューメーカーレビー第9彗星の木星衝突、また実際の小惑星の分布や軌道運動についてご紹介しました。そして、天体の地球衝突の可能性についてお話しして、最後に太陽系天体の探査について触れました。お話の後、質疑応答の時間が30分くらいありましたが、時間が足りないくらい活発に質問がありました。 宮崎科学技術館や天文協会の皆様には、講演会の企画からスライドの作成、そして当日の作業まで、いろいろお世話になりました。本当にすばらしい講演会だったと思います。私の話が至らない点が多々あったと思いますが、この講演会を通して天体衝突問題について理解していただくのにお役に立てたなら幸いです。 さて、講演会の後、天文協会の皆さんと記念撮影や懇談をしましたが、その後、羽田に戻る飛行機まで少し時間がありましたので、宮崎市から車で50分くらいのところにある「サンメッセ日南」に連れていっていただきました。ここには、「モアイ」の像があるということでしたが、行ってみますとありました。海を背にして7体のモアイ像が並んでいます。 南米チリ沖合のイースター島にあるはずのモアイがどうして宮崎県日南市に?、と誰でも思うことと思います。さっそく案内していただきましたサンメッセ日南の尾山さんにお伺いしました。すると、これにまつわるストーリーを聞かせていただきました。単に人目を引こうとして置いてあるわけではないのです。 そのストーリーの内容を要約しますと、日本のある企業が倒れていたモアイの様子をテレビで見て、それを修復したいということをチリ政府やイースター島長老会と交渉しました。その結果、修復を行うことになり、「モアイ修復プロジェクト」が1990年代はじめに発足されました。修復作業は1995年に完了し、15体のモアイ像が再建されました。このことに対してイースター島の長老会が感謝の印として、モアイを日本で復刻することを許可したのです。この日南にあるモアイのように、本物と間違えるほど精巧な復刻は世界でも珍しいそうです。そして、復刻されたモアイを置く場所として、日南海岸の風景が最もふさわしいということになって、サンメッセ日南に置かれているということでした。イースター島と日本との友好の証ですね。 モアイはじっと眺めていると楽しくなってきますが、サンメッセ日南も非常に環境のよい公園です。大きく開けた海に緑の丘陵。そしてモアイ像。自然の中でのんびりとしたひとときを過ごすことができます。ただし、開園は昼間だけとのこと。夜は一般の人は入れません。ですが、このようなところで、夜、星の観望会ができればきっとすばらしいことでしょう。サンメッセ日南にお伺いしたときも、このようなことが話題にのぼりました。実際、宮崎県天文協会の皆さんの中には、ここでモアイと一緒に星空やヘールボップ彗星の写真も撮っています。その写真も見せていただきましたが、ただの星の写真とはまたひと味違ったものがあります。是非、モアイと一緒に星の観望会ができればいいですね。 ※参考 謝辞:
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