日本スペースガード協会
         特定非営利活動法人として再発足

                 磯部 しゅう三(JSGA理事長/国立天文台)

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 日本スペースガード協会は、1996年10月20日に発足し、すでに3年が経過した。それまで、小惑星の観測、軌道進化等を研究する天文学者グループと、小惑星を将来の資源と位置づけて研究する宇宙工学者グループが合同で研究会を開催していた。しかし、学問的にも、また社会的にも関心の高まってきた天体の衝突問題に関して、研究者のコミティを越えた議論を踏まえながら、観測や研究をするべきであるとの認識に立ち、一般の人にも呼びかける形で当協会を発足したわけである。

 不必要に恐怖感を煽ったり、逆にまったく問題にされなかったりと、ともすると誤解されがちであった小惑星地球衝突問題について、少しでも多くの方々に正しい認識を持って頂くために、講演会や書籍の出版などを通して普及活動にも力を入れてきた。また、新聞や雑誌等、マスコミ分野においても、この問題が正当に取り上げられることが多くなってきている。その結果、現在では当協会の会員数は500をこえるまでに至った。さらに最近、1997XF11等、地球衝突の可能性ありとする小惑星発見のニュースが続いたり、また、彗星衝突・小惑星衝突に関するハリウッド映画が話題を呼んだりと、一般の人々の認識拡大を後押しすることがらも見うけられた。

 一方、協会の主催する衝突問題に関する研究会では、どのようなストラテジーで活動を進めるかが議論されてきた。そして、あらゆる事に先だってなすべきなのは、将来に衝突の可能性がある小惑星を全て見つけ出すことであるという共通認識が得られた。そして協会の中心となる方々が、国に働きかけ、理解を得ることにも成功して、地球に接近する天体を探索する望遠鏡の建設も現実のものとなった。それは美星スペースガードセンターとして、まもなく完成の日を迎えようとしている。

 そのように具体的な観測や研究環境が整っていく中で、今度は当協会の組織形態が大きな問題として認識されるようになってきた。私達の協会は、公に登録された組織ではなく、単なる同好会と同じレベルのものであった。これでは何かことを始めるにあたって、公の機関と正式に契約関係を結ぶことは困難なのである。しかし幸いなことに、1998年3月に特定非営利活動法人法(いわゆるNPO法)が制定され、当協会も法人となる道が開かれたわけである。

 すでに1999年2月21日の総会において、本協会をこの特定非営利活動法人へ移行するための手続きを開始することが議決された。そして、7月12日に東京都に認可申請をし、11月5日に認証された。続いて、法人登記の手続きを始め、11月26日に登記が完了した。これにより、当協会は正式に法人として活動に入ったことになる。

 現代社会にはいろいろなレベルの危険がある。例えば事故死の中で最も危険なものに自動車事故がある。これは大変頻繁に起こっているので人々の関心が高い。一方、起こると大きな災害をもたらすが、滅多に起こらない危険となると、どうしても関心が薄くなる。かつて地震災害がそのようなものの一つであった。しかし、最近では国際的通信網の発達により、世界各地で起こった地震の様子を即刻、詳細に知ることができるようになった。また、救援活動の連携も国際的になり、しかもボランティアとしての一般市民の参加も日常的になってきた。その結果、かなり身近なものとして、多くの人々の意識の中に定着してきたようである。

 当協会の関連する小惑星衝突によるグローバル災害は、もちろん、何十万年に1回しか起こらないものである。しかし、一度起こると人類社会全体が壊滅的な状態になることもありうる。現代に生きている人々は誰もその災害の経験がなく、関心は極めて低い。しかし、宇宙技術の発達や、それに伴う太陽系科学の進歩によって、地球の歴史や現在の地球がおかれている宇宙環境について、非常に多くのことがわかってきた。その結果、天体の衝突現象は決してめずらしいものではなく、地球を含む太陽系の発達進化で主要な役割をはたしてきとことも、研究者の共通の認識となってきたのである。したがって、地球に接近する天体の詳細なサーベイは、地球規模の災害防止の観点からはもちろん、科学的観点からも、非常に重要になってきた。

 日本スペースガード協会は、いま特定非営利活動法人として公に認められた組織となり、また観測施設の整備も進んで、このような天体の探索、研究、そして科学的情報の啓蒙活動を進める上での準備が整ってきたわけである。しかもイタリアに本部を置く国際的機関であるスペースガード財団をはじめとして、世界各国でも同様の機関の設立や設立準備が進められており、活動の国際的連携も現実的なものになりつつある。当協会もさらに充実した活動を支える組織の強化に向けて、会員諸氏の一層の御支援御協力をお願いしたい。



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