美星スペースガードセンターからの報告 |
BATTeRSプロジェクトがいよいよスタート 今までの「あすてろいど」でもしばしば紹介されていましたが、岡山県美星町に整備が進んでいました「美星スペースガードセンター」における観測がついに始まりました。 2000年1月末に、まず口径50cmの望遠鏡が設置され、現在、テスト観測が行われています。 美星スペースガードセンター(Bisei Spaceguard Center:略称はBSGC)は、小惑星とスペースデブリを観測する専門の施設です。この施設は、科学技術庁の補助金によって日本宇宙フォーラムが整備を行ってきたものです。 スペースデブリとは、地球のまわりを周回している使い終わった人工衛星やロケット、そしてそれらの破片のことで、いわゆる宇宙のゴミです。このようなゴミは人工衛星と同じように高速で飛行していますから、使用中の人工衛星に衝突すればそれを破壊してしまいます。また、スペースシャトルや現在建設が進んでいる宇宙ステーションのように人間が中で活動しているものにとっては、特に脅威となります。このようなスペースデブリについては、今まではアメリカやロシアが中心となって監視活動がなされていました。 そして、小惑星については、地球に接近するもの(ここではNEOと呼びます。NEO=Near Earth Object)を発見して追跡観測をすることが主要な目的となります。NEOの観測も、現在ではアメリカの5つくらいのグループが中心に行っていますが、これからは日本もその観測活動に加わることになったのです。 さて、名称は美星スペースガードセンターですが、要するに望遠鏡を設置した天文台であるわけです。したがいまして、観測を実際に行うスタッフが必要になります。いろいろな条件のもとで検討を進めてきました結果、実際の観測やデータ処理の作業は、中野主一氏、浅見敦夫氏、浦田武氏、大島良明氏、橋本就安氏にお願いすることになりました。これらの皆さんは、アマチュアの天文家として、観測やデータ処理の経験が豊富な方ばかりです。また、常勤ではないですが、イギリスのデイビット・アッシャー氏にも時々来てもらうことになっています。プロジェクトの総括者は、日本スペースガード協会理事長の磯部秀三氏(国立天文台)です。この他、ネットワークや計算機システムの設計・管理を、日本宇宙フォーラムの寺薗淳也氏にお願いしました。そして、各種の雑務を私が処理することになっています。 BATTeRSは、NEOを観測するためのプロジェクトですが、同時にBATTeRSのメンバーがスペースデブリの観測も行っています。デブリについては、データは宇宙開発事業団に送られて解析がなされることになります。つまり、美星スペースガードセンターでの観測はすべてBATTeRSのメンバーが行いますが、データの解析については、小惑星関係のみBATTeRSで行うということになります。 望遠鏡というものは、設置してすぐに予定の性能が出るとは限りません。むしろ、設置してからかなりの期間テスト観測を続けることで観測精度を上げていくということが普通です。美星スペースガードセンターの場合でも、まだまだテスト観測が続いています。そして、少しずつ観測精度や作業効率を上げるように努力が続いているのです。 観測中には、望遠鏡のそばには人は行きません。これは、人が望遠鏡のそばにいると空気に乱れが生じて観測精度が悪くなってしまうからです。観測中の望遠鏡制御は、すべて離れた制御室から行います。その制御室の片隅には、大きなダルマが置かれています。まだ片目しか入っていません。なるべく早くプロジェクトが本格的に動き出して、ダルマにも両目が入ることを期待しています。(2000年3月20日:春分の日にて) ※参考:
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30号の目次/あすてろいどのHP