日本スペースガード協会  第3回総会報告


 1999年度総会(第3回総会)および第11回公開講演会が、2月20日(日)の午後、葛飾区郷土と天文の博物館で開かれました。以下に総会に関する議事録を掲載いたしました。なお、この開催にあたっては、博物館の方々に大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

(日時)2000年2月20日(日) 15:30〜17:00
(場所)葛飾区郷土と天文の博物館
(配布資料)日本スペースガード協会 第3回総会資料
     ・1999年度 事業報告(案)
     ・1999年度 収支決算(案)
     ・2000年度 事業計画(案)
     ・2000年度 収支決算(案)

1. 開会挨拶
 磯部理事長より開会の挨拶が行われた。

2. 議長選出
 松島理事を議長に選出した。

 ・総会の成立について
  豊川理事(事務局)より
  正会員309名の1/5以上出席(委任状含む)が総会成立であり、出席者35名、委任状151通となっているため、総会は成立すると、報告があった。

3. 議事録署名人の選出
 寺薗及び渡辺理事を署名人として選出した。

4. 1999年度事業報告(案)について
 豊川理事より報告が行われた。拍手を以て承認された。

5. 1999年度収支決算(案)について
 豊川理事より4.と同時に報告が行われた。
 ・1999年11月からNPO法人化されたため、1999年度の事業報告、収支決算は以前の任意団体としてのJSGAのものである。従って、NPO法人としてのJSGAの会計報告としては、1999年内の活動実績がないため、収入、支出0円となる。(磯部) 拍手を以て承認された。

6. 2000年度事業計画(案)について
 豊川理事より報告が行われた。 拍手を以て承認された。

7. 2000年度収支計画(案)について
 豊川理事より報告が行われた。
 ・昨年度には編集経費が計上されていなかったが、今年度から計上されているのはどのような理由か?

  現在、「あすてろいど」を一度編集するたびに、コピーやソフトウェアのバージョンアップ、印刷原稿まで作り上げるための経費の中には、領収書を取れない経費も含まれている。そのため、1回3万円という形で計上させて頂いた。(豊川)

 これまでは私的な集まりでやってきたため、ボランティア精神を100%発揮してやってきて頂いたが、会員数も増えてきて、また今後法人として活動していくことを考えると、ポケットマネーで済む部分にも限界があると判断した。その他の部分についても、理事会にて慎重に対応をしていきたい。(磯部)
  拍手を以て承認された。

8. 監査報告
 上記2つについて、白井監事より報告があった。帳簿、領収書等の監査を行い、適正であると認定された。

9. 役員の選任及び辞任について
(1) 輿石肇氏(理事)の辞任に伴い、名誉会員に推薦する件
 豊川理事より名誉会員推薦について説明(推薦理由は別紙参照)が行われた。

 ・スペースガード協会はもともとは「小惑星衝突問題研究会」から始まっている。これは、輿石氏の小惑星の資源利用と、磯部氏の太陽系起源の研究会が合同となって1993年に設立されたものである。輿石氏の本会に関する貢献度の高さをご考慮の上、ご承認頂きたい。(磯部)
 拍手を以て承認された。

(2) 寺薗淳也氏を理事に選任する件
 豊川理事より理事選任について説明が行われた。
・なお、現役員任期は2000年12月31日までとなる。 拍手を以て承認された。

10. その他
(1) 美星スペースガードセンター(BSGC)の運営等について
 磯部理事長より以下の説明が行われた。

 美星スペースガードセンターは現在(財)日本宇宙フォーラム(JSF)が建設を行っており、建物等の所有もJSFである。ただ、観測や運用についてはJSGA側で行う必要がある。従って観測を受託することになる。そのため、JSGAにて選任の観測者を雇用し、その人にあたってもらうことになる。365日観測する必要があるため、6人の夜間スタッフで毎晩2名ずつ観測を行う予定である。委託費用は約3000万円となっている。
 建物の維持管理などの費用はJSF側で支払う予定である。これらの費用は宇宙開発事業団から支払われる。観測のスケジュールとしては、全体を10とし、スペースデブリが4、小惑星が6となる予定である。
 スタッフには中野主一氏が入る予定であるが、そのために理事を下りる予定になっている。雇用されるスタッフにはアマチュアの天文家4名があたる予定で、さらにデイビッド・アッシャー氏が日・英3ヶ月ごとに行き来する形で観測を行う。
 さらに、キャロライン・シューメーカー氏についても、名誉観測員として加わってもらう予定である。
 作業を委託した場合の管理費についてもある程度認められる予定である(約20%)。したがって協会としては600万円の上乗せができる(この費用を利用していろいろな事業展開を行う)ことも可能になる。ただ、この費用はまず事務体制の構築に使わなければならない。
 最終的には協会で独自の望遠鏡ができるくらいにまで活動の幅を広げていきたい。
 スペースデブリについては、岡山県上斎原村に直径1mのレーダードームを持つ、上斎原スペースガードセンターが建設中である。これと美星スペースガードセンターが連携して、観測を行う予定である。JSGAの目的とスペースデブリの観測は違うという意見もあるが、私自身は両者とも人類の生存を脅かす可能性がある危険であることに間違いないと思っている。

・スペースデブリの光学観測は、海外ではどのようなことが行われているのか。できれば、「あすてろいど」にやさしい論文を書いて欲しい。(寿岳)

 CRLの梅原氏が詳しい。次回の「あすてろいど」に梅原氏が解説する。(註 これは編集委員との検討で、7月発行分に掲載することになった。)

 光学観測は2000〜3000km以上のスペースデブリに対して基本的に有効である。それ以下の高度ではレーダ観測の方が有効である。諸外国では、アメリカ、旧ソ連が行っているが、費用がかかるため他の国では行われていなかった。1992年頃から、次第にスペースデブリに対する認識が広がってきて、観測が行われてきた。
 BSGCの望遠鏡はまず、静止軌道のデブリについては直径20cm程度のものをつかまえることが(理論的には)可能である。それを実現させるためには観測手法などを考えていく必要がある。
 50cmの望遠鏡は1秒に5度というかなりのスピードで追尾することが可能である。これは低軌道上に存在するデブリを追尾することを念頭に置いている仕様である。レーダは距離を測るものであり、光学望遠鏡は角度を測る機械であるから、両者を連携させるとデブリの位置や動きをかなり正確に捉えることができる。
・国連では1970年代からスペースデブリについての議論が行われている。基本的には「デブリを出さない」ことが重要である。NASDAでは、軌道離脱や燃料廃棄などによって、そのようなことを実践している。宇宙ステーション高度であれば、10cm程度のデブリを観測することが可能である。軌道がわかっているものについては、軌道を変更して下げるということが手段である。また、速度にもよるが、1cm以下のものはデブリバンパーにより構造物へのダメージを最小限にしようとしている。人工衛星などに被害を与えないためには、小惑星の軌道と同じように、スペースデブリの軌道も把握する必要がある。(堀内)

・データの公開方法についてはどのような形がとられる予定か?

 データは平均して1ヶ月に2TB程度出力される予定である。これは、BSGC内で保存でき
るデータ量に等しい。ただ、BSGCに622Mbpsの高速データ回線が導入される予定になっており、それを通じて巨大なデータサーバを利用し、そこに蓄積されるということを考えている。
 データは観測後2週間で、誰でも自由に持っていくことが可能である。観測者の優先期間が2週間と短いのは大きな特徴である(Acknowledgementは必要)。また、JSGA-JSFの共同事業として、このデータを教育用に活かすことを考えている。これについては4月からテスト校で実験をはじめ、来年4月から本格的に行う予定である。またBritish Councilがこの計画に興味を示しており、リバプールのJohn Moore大学にて共同でプロジェクトを行う予定である。また、これらのデータは英連邦諸国にも流れる予定である。
 自分たちとしては、見つけるだけでなく、世の中の人に役に立つ範囲でデータを提供していきたいと考えているので、会員各位のご教示をお願いしたい。(磯部)

(2) その他
・BATTeRSについて(吉川)
 BSGCにおいて、小惑星を観測するためのプロジェクトとしてBATTeRS(Bisei Asteroid Tracking Telescopes for Rapid Survey)がスタートした。これはアメリカでいうLINEARやNEATなどと対応する名前である。
 内容は既に磯部氏が話したことと一緒であるが、基本的にNEOの発見及び追跡観測ということである。
 現在、望遠鏡の調整を行っている。

・BSGCには25cmの望遠鏡があると思うのだがこれはどのような役割を果たすのか?

 現在、50cmが据えつけ済、1mも夏ないし秋には稼働できる予定である。これらの望遠鏡は液体窒素で冷却しているため、機構上、カメラは一切動かすことができない。しかし、実際にはデブリの観測をするためには、高速で動いている低高度のデブリを短時間露出で追尾していく必要がある。LINEARの望遠鏡にはこの機能を持ったCCDが搭載されているが、我々のところはまだできない。そのための開発用として、25cmの(視野角2度くらいの)望遠鏡を赤緯軸の耳のところにとり付けて、観測を行う。(磯部)

・正会員と賛助会員の差異
 正会員の方は、今後とも協会の実務に積極的に関与して頂きたい。

11. 閉会挨拶
 吉川副理事長より閉会の挨拶が行われた。

       1999年度 事業報告 (1999年1月1日〜12月31日)


  1.20 機関誌「あすてろいど」第25号発行
  2.21 第4回公開講演会            東京都台東区 国立科学博物館(45名)
  2.21 第2回総会               東京都台東区 国立科学博物館(31名

  3.5  第7回衝突問題研究会         茨城県鹿嶋市 通信総合研究所(16名)
  4.20  機関誌「あすてろいど」第26号発行
  5.16  第5回公開講演会           宮崎県宮崎市 宮崎科学技術館(120名)
  6.13  第6回公開講演会           山口県山口市 山口県立博物館(53名)  
  7.12  特定非営利活動法人設立認証申請書提出 
  7.20  機関誌「あすてろいど」第27号発行
  8.29  第7回公開講演会           新潟県新潟市 新潟県立自然科学館(71名)
  9.15  第8回公開講演会          静岡県焼津市 ディスカバリーパーク焼津(36名)
  9.19  第8回衝突問題研究会         東京都北区 駿台学園(25名)
 10.20 機関誌「あすてろいど」第28号発行
  11. 5  特定非営利活動法人設立認証書受領
  11.21 第9回公開講演会          北海道札幌市 札幌市青少年科学館(70名)
  11.26 特定非営利活動法人登記

    1999年度 収支決算 (1999年1月1日〜12月31日

 1.収入の部

   1.会 費      1,363,000     490名
   2.事業収入  販売手数料      95,400     集録、合冊本他
           講師謝礼       42,500
   3.寄付金収入       35,030     4件
   4.雑収入   利息            706
           その他の収入     43,733     印税
   前年度繰越        442,105
    合  計      2,022,474円

 2.支出の部

   1.事業費  (1)機関誌発行事業費
               通信運搬費    433,305
               印刷製本費    358,381     機関誌
          (2)普及事業費
               講演会経費    278,103     講演会旅費、講師謝礼
   2.管理費
              事務費        70,100     事務用品、封筒
    合  計              1,139,889円

 3.次年度繰り越し(収入−支出)
         2,022,474−1,139,889=882,585円

    2000年度 事業計画    (2000年1月1日〜12月31日)

   1.20 機関誌「あすてろいど」第29号発行
   1.22 第9回衝突問題研究会    福島県いわき市 東日本国際大学(13名)
   1.23 第10回公開講演会     福島県いわき市 いわき市文化センター(94名)
   2.20 第11回公開講演会     東京都葛飾区 葛飾区郷土と天文の博物館
   2.20 第3回総会           東京都葛飾区 葛飾区郷土と天文の博物館
   3.4〜11 アリゾナクレーター探訪と天体衝突を考える旅 
   4.20 機関誌「あすてろいど」第30号発行
   7.20 機関誌「あすてろいど」第31号発行
   10.20 機関誌「あすてろいど」第32号発行

   ・グッズ等の作成   ピンバッチ   2月
              会員証     4月
   ・会員名簿の発行           4月   
   ・年報の発行            12月
   ・研究会 2回程度開催予定
   ・講演会 開催予定(中国、四国他)

   2000年度 収支予算  (2000年1月1日〜12月31日)

1.収入の部

    1.会 費      1,500,000 (600名×2500円)
    2.事業収入
       書籍等販売手数料  300,000     
       講師謝礼       47,000
    3.寄付金収入       10,000     
    4.雑収入
       利息            415
       その他の収入     10,000     
    前年度繰越        882,585
     合  計      2,750,000円 


2.支出の部

    1.事業費
    (1)機関誌発行事業費
        通信運搬費    550,000
        印刷製本費    450,000    機関誌、会員名簿
        編集経費     120,000
        年報発行経費   200,000
    (2)普及事業費
        講演会経費    500,000     講師旅費・謝礼等
        グッズ等作成経費 530,000     ピンバッチ、会員証
    2.管理費
       事務費       200,000     事務用品、事務補助
    3.予備費        200,000
     合  計      2,750,000円


  30号の目次/あすてろいどHP