地球接近小惑星の発見の経緯

                           吉川 真(宇宙科学研究所)


 

 最近、特に地球に接近する小惑星であるNEA(Near Earth Asteroid)が注目されていますが、その発見数がどのようになっているのかを調べてみました。結果を図1に示します。

 図1は、ローエル天文台が公開しています小惑星のデータより、各年月ごとに発見されたNEAの数をヒストグラムで示したものです。データは2000年5月初めに取得したもので、そこには72383個の小惑星の軌道データが収められていました。その中で、NEAのみを抜き出すと997個になります。ここでは、NEAの定義としては、通常よく使われていますように近日点距離(小惑星の軌道上で太陽に一番近づく点の太陽からの距離)が1.3天文単位より小さいものとしています。また、発見された年月につきましては、小惑星の仮符号から求めました。すでに小惑星に名前が付いてしまったものについては、仮符号を調べ直してカウントしています。

 図1には、1981年以降の発見の状況を示しています。NEAは1980年以前にも発見されています。その最初のものは、1898年に発見された小惑星エロスで、第2番目がつい最近再発見されました小惑星アルベルトです。1980年までには、50個ほどのNEAが発見されています。その後の発見の様子が、図1になるわけです。図1を見れば分かりますように、1990年頃までは発見の数は毎年わずかでした。1990年から1997年までは発見数がそれまでよりかなり増えています。そして1997年の終わり頃からは、発見数が急激に増えていますが、これはアメリカのリンカーン研究所のリニア(LINEAR)プロジェクトのためです。

 参考までに、発見されたNEAの総数の推移を図2に示します。これは、アメリカのジェット推進研究所のグループがまとめてホームページに公開しているものです。小惑星の大きさによって色分けしてありますが、大きいもの(ここでは、直径が1km以上のもの)もすでに400個ほど発見されているようです。

 これからは、いよいよ日本の「美星スペースガードセンター」も観測に加わっていくことになるかと思います。NEAの発見数がどのようになっていくのか楽しみです。

図1 地球接近小惑星の発見数の推移。(詳細は本文を参照)

図2 地球接近小惑星の発見総数の推移。(http://neo.jpl.nasa.gov/neo.htmlより)


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