編集室から
 2001年もすでに5月、最もすばらしい季節を迎えています。しかし、世の中は何と目まぐるしくものごとが起き、その結果、当然のことながら慌ただしく、落ちつかないことでしょうか。今年の東京の桜は実にきれいに咲きました。しかし、心静かにこの花を観賞できた人がどれほどいたことかと、これまた余分な思考をめぐらして慌ただしさを加速しています。

 さて吉川さんに「国際小惑星監視プロジェクト」の報告をして頂きましたが、実際に作業に当たった美星SGCスタッフの作業の様子がよく伝わってきます。本当にご苦労さまでした。しかしこのような計画の積み重ねが小惑星への関心を高めるだけでなく、広く見れば理科教育などへの一つの刺激になることを示したような気がします。次回のさらに楽しい計画を期待しています。
 梅原さんには少し雰囲気の違ったエッセイ風の美星報告をしていただきました。センターだけでなく、美星町の様子がとてもよく伝わってくるような気がします。それに合うようにとレイアウトなども変えてみましたが、いかがでしょうか。
 6月にはJSGAのツアー、二回目の試みとしてマダガスカルへの皆既日食観望を計画しています。現在、参加者の間のメーリングリストもでき、楽しい情報交換も行われています。そこで、天体観測のベテラン、田中千秋さんにお願いして日食写真の撮り方をわかりやすく開設していただきました。ツアーに参加される方はもちろんのこと、日食写真にこれから挑戦してみたいという方には、大変参考になるのではないでしょうか。

 今回、会員の洲崎保司さんから論文の大作を投稿いただきました。天体の衝突断面積定義に基づいて、地球と月、木星、および太陽への天体衝突について論じておられます。地球の天体衝突問題を、太陽系における衝突問題の中で客観的に捉えようとする観点は、今後の発展につながると思います。ぜひ今後も研究を続けられることを期待しています。また会員の皆さまからの、この論文へのコメントや感想もお待ちしています。

 ところで長い間、「今月のイメージ」欄とこの「編集室から」に登場している犬のシルエットに気が付いておられたでしょうか。これは「あすてろいど編集室」の愛犬「チャッピー」(写真)をモデルにしたものです。しかし、今年の二月、チャッピーはその15年にわたる生涯を終えてしまいました。超意気地がなく、特に目立った才能もなく、かといって人を引きつけるような容貌に恵まれることもなく、それはまるで飼い主のコピーのような、いたって平凡な生涯ではありました。その大半を寝てすごし、一日一回の、それもほとんど毎日同じ内容の食事に満足し、たった一つの要求は朝の散歩だけ。それはある意味では筆者の人生の師でもあったのです。
 特に死に際は立派でした。死の直前まで、幾分、老衰の兆しを感じさせはしましたが、それでもいたって元気でした。ところが突然、食事をいっさい受け付けなくなったのです。水もほとんど飲まず、ただいつもの日向ぼっこを続けていました。それから五日後、静かに昏睡状態に入り、やがて息を引き取ったのです。まるで自分の寿命をきちんと見極め、それを受けれていたようなすがすがしさでした。あらためて尊敬の念を深くしたしだいです。というわけでこのシルエットは当分このままにしておきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
                                          (松 島)