「美星ジョギング探訪」

                     茨城県鹿嶋市  梅原広明


タクシーの運転手が道に迷っています。
新幹線新倉敷駅から山を一つ越え再びのぼると美星に着くはずですが、途中の矢掛町で一つ案内標識を見逃してしまったようです。
地図をコピーして持ってきておいてよかった。
噂にはきいていましたが、新倉敷駅前におりたったときは、あまりの物のなさにびっくりしました。
昼食を駅前でとろうというもくろみは崩れます。
これが最初に美星スペースガードセンター (BSGC) を訪れたときのできごとでした。

1年前の冬。一泊しかしなかったため、圧倒されたまま美星を発ってしまいました。
しかし、落ち着いて考えると、山道が沢山あります。
私は今年の1月号で自己紹介させて頂いたように、ジョギングが好きです。
今、住んでいる鹿嶋の海辺を走るのもよいのですが、たまには長い坂道を走ってみたいなとも思いました。
よし、今度美星に行く機会があったら走る準備をして出かけよう。
昨年12月に2週間程、再び BSGC を訪問させて頂く機会を頂きました。
もちろん、ジョギングシューズ持参。
観光で訪れたわけではないので、毎日は無理でしたが、見晴らしのよい幹線道路、ひなびた旧道など、いくつかの道を楽しむことができました。

さて、3回目の機会は、すぐに訪れました。
次の週、年末年始です。
前回までは BSGC の見学をさせて頂いていたのですが、今回は 50cm 望遠鏡の観測システム構築のごくごく一部を担わせて頂きました。
小惑星・スペースデブリを検出し位置を測定するソフトウェアが完成するまで暫定的に解析するプログラムの一部分を整備させて頂きました。

前回訪問させて頂いたときに 50cm 望遠鏡の付属機器が、それまでの暫定的なものから正規のものに組みかえられました。
それにともない調整を行なう必要がありました。
やや難航しソフトウェアの完成が遅れているようです。
しかし、年末年始も観測は行なわれるため、円滑にデータ処理をするためのプログラムが必要でした。
ちなみに、写真は新年を迎え約1時間たったときの観測室内の風景です。
スタッフがコンピュータ画面と対峙しています。
静かに21世紀を迎えました。

もちろん、今回もジョギングシューズ持参。
美星で初詣をしようと思いました。
ところで、私は今年の1月から編集委員の推薦を頂きました。
不思議なもので、そういう立場になると新企画が思いつきます。
自分の趣味を活かして、今までとは違った視点で美星、
特に BSGC の外を紹介できるのではないだろうか?と。

さて、発想というのは記憶をつなげます。
前回訪れたときに、宿泊先のペンションで何気なく町の広報やチラシを見ていたら、
囲み記事で「星の郷」の由来が書いてあったような気がしました。
そのチラシを入手しなかったので記憶だけが頼りなのですが。
その昔話「星尾降神伝説」によると、流れ星が3つにわかれて落ちてきたそうです。
その3か所に「高星神社」「星尾神社」「明神社」を建てたようです。
それ以来、皆さんが幸せになったそうです──
いつの時代につくられた話かは知りません。最近つくられたのかもしれません。
しかし、少なくとも本協会の発足より昔にあった話でしょう。
星が落ちた町だから地球近傍小天体の観測施設をつくったのかな、

落ちたのは流れ星だからクレーターは見つからないか?
などと冗談を浮かべながら、初詣に出かけました。

町の地図によると3神社とも美星の西端にあります。
BSGC から5〜6kmくらい離れています。
時間の都合で「高星神社」一か所に絞りました。
まずは町の中心に下りて、八日市につながる尾根沿いの道路で西に向かいます。
この道は毎年1月に行なわれる「星の郷健康マラソン大会」のコースだそうです。
大会の頃は粉雪の舞うことも多いらしいのですが、
       今日は日差しがここちよくふり注ぎます。

軽いアップダウンが数km続きます。
途中、ジョギングする人と挨拶をかわし、神社付近の集落に着きました 。
大雑把な地図なので、さてどこか、と探さなければなりません。
人に尋ねようにもひっそりとしています。
ようやく一人のおばあさんに出会い尋ねたところ
「お星様が落ちてきた神社かい。ちょっと戻ったところだよ。」
通り過ぎていました。
というのは非常に小さな神社でした。
どこにも「高星神社」の文字がありません…、
あ、鳥居の上に「星王大明神」と書かれていました。
おまいりし、しばらく休み、暗くなる前に帰路につきました。
観測が始まるからです。

さて、今後このコーナーが続くかどうかは明言することができません。
しかし、たぶん再び何回か(も?)美星に訪れる機会を頂くことになると思います。
時間に余裕があれば、他にも訪れたいところが沢山あります。
寺社、城址、渓谷、温泉、ステーキ…
車の目線でなくジョギングにこだわりたいので、行くところに限りはありますが、
ぜひ探訪し紹介したいと思います。
まずは「星尾降神伝説」の追究から。
                (2001.1.7 執筆)