宇宙からのインパクター-2 |
3.地球に衝突する小さなものー流星 さて、次に、今からそう遠くない未来に起こる現象についてお話しましょう。100年のうちに数回しか起こらないような、雨のように降るすばらしい流れ星(流星雨と呼ばれます)が見られるはずなのです。今年か来年が、そのめったにないチャンスなのです。 流れ星とはなんでしょう?それは、1ミリから1センチくらいの大きさの粒子が、秒速数十キロメートルの速さで地球に衝突して来るときに起こります。猛スピードで地球の大気に突っ込んでくるので、粒子は熱くなり、地球の大気と反応して光を発し、流れ星になるのです。だいたい上空100キロメートルくらいで起こります。もし、晴れた夜、周りに明かりのない暗い場所へ行ったとすると、1時間に2、3個の流れ星は、いつも見ることができます。でも、1年のうちに何度か、もっとたくさんの流れ星を見ることができる期間があります。その期間は、地球が宇宙の塵の帯の中を通り過ぎている時なのです。だから、いつもよりたくさんの粒子が地球と衝突し、たくさんの流れ星を見ることができるのです。このように、地球が塵の帯のなかを通り過ぎるとき、たくさんの流れ星が見られることを、流星群と呼んでいます。例えば、1月初旬の四分儀座流星群、8月のペルセウス座流星群、12月半ばのふたご座流星群などです。これらの流星群は条件のよい(光害や月のない)夜なら1時間に100個くらいの流れ星が見られます。 今日、私がお話するのは、しし座流星群についてです。しし座流星群は11月中旬にあります。ほとんどの年では、しし座流星群は他の(四分儀、ペルセウス、ふたごなど)流星群に比べて、あまりたくさんの流れ星が見られません。せいぜい1時間10個程度です。しかし、ごくたまに、ものすごい数の流れ星が見られることがあるのです。しし座流星群は、テンペル・タットル彗星(1865年末から1866年初頭にかけて発見した二人の名前からきています)から放出された塵が元になっています。(発見者の一人、Horace Tuttle は、他にもたくさんの彗星を発見しています。実は彼は、勤め先の海軍から多額の横領をして首になり、天文学者になったのですが。) この図は、テンペル・タットル彗星と地球の軌道です。(図4)ほかの彗星と同じように、テンペル・タットル彗星は流星群の元になる物質を放出しています。彗星が太陽に近づいて暖められ、表面からガスを放出するときに、小さな粒子も剥ぎ取られるのです。このような小さな粒子が、彗星の軌道上に広がっていきます。この粒子が彗星を離れて何年か後に、地球に衝突して流れ星となるのです。 |
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![]() 図4 テンペル・タットル彗星の軌道 |
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テンペル・タットル彗星としし座流星群になる粒子の流れの軌道は、地球とは逆周りに太陽の周りを回っています。だから、しし座流星群になる粒子の流れが地球に衝突する時は、地球と正面衝突する形になるので、大気圏に突入するときのスピードが更に速くなるのです。このように、スピードが速くなることによって、しし座流星群は同じ位の大きさ(数ミリ)の粒子からなる他の流星群よりも明るく見えるのです。 しし座流星群は11月半ば、しし座の方向から粒子が地球に衝突してくるので、この名前で呼ばれています。ただしそれは、流れ星がしし座の中に見えるということではなくて、流れ星がやってきた方向を辿るとしし座になる、ということです。11月、しし座は真夜中ごろ地平線の上に顔を出します。だから、しし座流星群を見るためには、遅くまで起きていなければいけません。(または、うんと早起きしなければいけません。) なぜしし座流星群は、たまにだけ大出現するのでしょうか。それは、粒子の流れの中に、ときどき密度の濃い部分があるからです。もし、この密度の濃いところを地球が通れば、たくさんの粒子が飛び込んで、たくさんの流れ星が見られるのです。この密度が濃くて、粒子の多い部分は細長いtrail(筋) 状になっています。しし座流星群はだいたい一週間くらいの間、見ることができます。しし座流星群の粒子の流れは、そのくらいの幅があります。でも、その中でも密度の濃いトレイル(trail)は非常に細いのです。地球がこのトレイルを通り過ぎる時間は、1時間くらいしかありません。テンペル・タットル彗星は100年に3回、つまり、33年ごとに軌道を一周しています。彗星は毎回新しい粒子を放出し、密度が濃くて細いトレイルを造り、それはだんだん長くなっていきます。(図5) |
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![]() 図5-1 ダストトレイルの広がり(光圧の影響を無視した場合) |
![]() 図5-2 ダストトレイルの広がり(1mmサイズで光圧の影響を計算に入れた場合) |
トレイルは放出された時のままではなく、かなり長く前後に延びていきます。トレイルの一番前の方にある粒子は、何年かするうちに同じトレイルのさらに前の方へやってくるのです。しかし、個々のトレイルは数世紀の間、狭くて小さな領域の中にとどまっています。しし座流星群の大出現を予報するためには、トレイルが宇宙空間のどこにあるか、そしてこの細いトレイルのどれに地球がぶつかるのか、正確に計算しないといけません。それができれば、分単位で正確な予報を出すことができます。その予報は、惑星の引力がトレイルの粒子に及ぼす影響も加味して計算されています。 いろいろな年のトレイルの位置を見てみましょう。(図6)1833年、地球は彗星が1800年、つまり、1周期まえに回帰したときに生み出していったトレイルの中を通りました。これが1833年の大出現をもたらし、流星天文学の今日を築くきっかけにもなりました。 |
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![]() 図6 ダストトレイルの断面図(1833年) |
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