ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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このNEAは直径が1kmもある巨大なもので、地球衝突すると全世界的な破壊が起こり、人類絶滅の可能性が残されるものであった。
NASAのJPLの研究者を中心としたチームはその将来の軌道を正確に検正した結果は、西暦2880年3月16日に約300分の1の確率で地球に衝突する可能性があることがわかった。300分の1というのは、これまで記してきたケースよりはるかに高い衝突確率である。しかも、800年以上先まで予測できたということはこれまで記してきたことと矛盾するように思える。
まず、幸いしていることは、観測期間が50年と長いことである。これによって、将来の誤差楕円を小さくすることができる。もう一つは、レーダ観測がなされたことである。レーダ観測では、NEAまでを距離決定し、光学観測の赤経・赤緯のような天球上の方向ではない。そのため、観測精度が良いだけでなく、NEAの三次元的な動きを運動方程式を介さないで求められるのである。それなら、もっとレーダ観測をすればよいように思えるが、レーダのパワーは行きに距離の2乗分の1で落ち、帰りも同じく2乗分の1で落ちるので、結局4乗分の1になってしまう。そのため、少し距離が遠くなると、パワー不足で観測できなくなってしまうのである。
先にも記したように、5年〜10年の観測があれば数十年先までの誤差楕円をかなり小さくすることができ、地球へのより精度良い衝突確率を求めることができる。しかし、長い期間の観測があっても100年以上未来の衝突予測をすることは難しい。NEAが地球に次回接近する時に衝突するかどうかは、かなりの精度で求まる。しかし、接近する度に地球(火星や金星の場合もある)の引力の作用(摂動と呼ぶ)によって、接近位置のわずかな違いが将来の軌道に大きく影響することがわかってきた。これをカオス現象と呼ぶ。天体力学では、質点としての各天体の質量と位置・速度が一度決まると、将来の位置・速度を一義的に求めることができる。しかし、観測に誤差があれば、摂動物体に接近する度に将来の軌道が大きく異なってしまうのである。
1950DAは、この意味では幸いであった。軌道傾斜角が大きくて、地球への接近はあまり起こらないことである。次の接近は2032年、その次は2074年で摂動があまり積み重ならない。
1950DAの2880年の衝突に影響する要素は、ヤルコフスキー効果である。光はごくわずかであるが、圧力を持っている。太陽光は小惑星によって吸収され、小惑星を温め、赤外線を放出する。その赤外線の方向が小惑星の自転により最初に太陽光が来た方向からずれる。赤外線に主に放出される方向は小惑星自転と関係していて、太陽が真上の方向から30〜60度先に進んだ方向(地球の場合午後2時頃の方向)になる。小惑星が球であれば、放出される赤外線の圧力分布を正確に求めることができるが、いびつな形をしており、しかも自転をしているので、ヤルコフスキー効果による圧力のかかる具合を正しく求めることは難しい。そのため、将来の軌道決定を正確にはできないことになる。1950DAの2880年の衝突確率を300分の1より細かく求めることは小惑星の物理的性質を明らかにするまでは当分難しいであろう。
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