|
||
講 演 | ||
人類をもたらした大爆発 〜人類滅亡はあるか〜 | ||
磯 部 しゅう 三(国立天文台、NPO法人日本スペースガード協会理事長) | ||
1 はじめに
私達人類は、確かにこの地球上にいます。そして、その存在は親から子、子から孫へと永遠の過去から永久の未来まで続いているように思えます。しかし、科学の発達により、その存在には始まりがあり、終わりがあることが示されてきています。
天文学という学問があります。その学問分野では、私達の地球から遠く離れた宇宙の星々の研究が続けられています。人類の存在とは全く別世界の問題を扱う学問と思う方が多いと思います。しかし、その研究によって、人類の存在をもたらした基礎的な条件が明らかにされてきたのです。
その条件は大きく分けて3つあります。
1) 人類ばかりでなく、あらゆるもの入をれる空間と時間がなければなりません。
2) 生物や物体を形成するための材料(原子)がなければなりません。
3) 材料を頃合いよく混ぜ、変化させ、しかもその変化のスピードを速くしなければ、人類の誕生ということにはなりません。
これらの基本的な条件を満足させる鍵を握っているのは全て天体現象と関係しているのです。
ここでは、天文学がこれらの問題をどのように解決してきたかを一つ一つ示していきたいと思っています。
2 空間と時間の誕生
落語の世界では、長屋の大家さんと八つぁんとの掛け合いが題材としておもしろい。一つの話として、八つぁんが江戸から西に真っ直ぐ行くとどうなる、と聞く小咄がある。大家さんが京・大坂に達すると答えると、それでも真っ直ぐ行くと、と八つぁんが質問を続けていく。 唐、天竺に着き、その先には巨大な滝があって行けない、と言っても、なおも 真っ直ぐ行くと、 宇宙空間に飛び出し、銀河系の世界も飛び超え、銀河を超えて進む。執拗な質問に窮した大家さんが、その先は霧がかかって何も見えない、と答える。それでもなおも真っ直ぐに行くと、との問いに困った大家さんは、ついに、そこは無の世界である、と答える。すると、八つぁんは、無の世界にまで行った俺は何者だろう、と言って落語の落ちになる。
|
||
76KB 図1 遠くに行けば宇宙のはてに近づくことになる。それは「無の世界」から出発した。 (ブルーバックス「宇宙のはてを見る」磯部 三著より) |
||
|