ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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先に、太陽の中心部では水素原子核がヘリウム原子核に変わる反応 が起こっていると記した。もし、星の質量が太陽の何倍もあると、中心に貯ま ったヘリウムが自身の重みで押しつけて高温になり、ヘリウムが炭素、酸素に変われるようになる。さらに反応物質が貯まると、より高温になり、次の反応へと進めるのである。次々と進んで、鉄の原子核が形成されるところまで来る。しかし、それ以上の反応は起こらない。鉄の原子核は最も安定な原子核であり、周りからエネルギーを吸収することにより反応は進む。
星の中心部は高温になることにより、星の外側部分の原子が落下してくるのを支えていたが、鉄の分解によるエネルギー吸収により支えられなくなって、星全体が崩壊し、周りに残っていた水素、ヘリウム、炭素、酸素等の原子核融合反応が一気に起こって、大爆発をするのである。これを超新星爆発と呼んでいる。
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表1 元素合成が進むために必要な温度
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図4 カシオペアの超新星残骸
約300年前の爆発後飛び散ったガスが、現在でも四方八方に飛び散りながら(矢印の方向)輝いている。
長い年月をかけて形成されてきたいろいろな原子は、爆風と共に宇宙空間に放出され、拡散していく。このような超新星爆発は何度も繰り返されており、1987年には大マゼラン銀河中に肉眼でも見えるくらい明るく輝いた超新星の爆発は有名である。飛び散るガスの中に、ヘリウム原子より重い原子が大量に存在しているのが検出されている。
このようにして、人類を作るための材料(原子)は宇宙に拡散し、混ぜ合わされ、次の世代の星の形成の時に取り込まれていくのである。
4 人類の誕生に向けて
星は、宇宙に広がるガスを集めて形成される。宇宙が誕生してから最初の頃に作られた第一世代の星には水素とヘリウムの原子しか含まれていない。しかし、超新星の爆発が何回も何回もあった後に形成された星には、現在と同じような割合でいろいろな原子が含まれている。今回は触れないが、星が形成される時には周りには複数の惑星を持つ惑星系が形成される割合が大きい。そして、 中心の星 から一定の距離までの惑星は、地球や金星のように岩石質の物質を多く含む固体の惑星になる。中心の星からの距離が適当な範囲に入れば、その表面に液体の水を保っている可能性は多い。地球はそのようなケースの一つである。
いろいろな物質の溶媒となる液体の水があるところでは、生命が発生する可能性が高いことが示されてきた。そのメカニズムについては、筆者は専門外であるのでここでは深入りしない。問題にしたいことは、地球に生命が誕生してたった40億年足らずの間に人類のような高度な活動をする生命体にまで進化できるかどうかである。
ダーウィンは、環境に適した生物種 が繁栄すると いう法則を提案した。 これはこれで正しいであろう。しかし、これでは新しい生命種の誕生は難しく、進化はほとんど進まないであろう。生命の進化をもたらすには、環境の突然の変化が必要に思える。
地球の地質年代を見ると、古生代、中生代、新生代、さらにそれらが細分化されて、中生代は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀等と分かれており、各時代区分の前後で主な生命種ががらりと変わっていることである。古生代が終わると突然三葉虫がいなくなり、中世代末には恐竜が消え去っている。
前の時代に繁栄した生物種が絶滅した後に、新しい多様な生命種が爆発的に誕生してきている。 前の世 代に主流であった生命種がいる間は新しい生命種 が誕生しても 全て淘汰されていたのが、その圧制者がいなくなって、一気に生命種の多様性が増したのであろう。そして、次の世代の安定な環境に入って、ダーウィンの法則が当てはまるようになるのであろう。これを断熱平衡説と呼んでいる。
このような生命種の絶滅は、新しい生命種の進化を押し進める。中世代には、ネズミのように夜行性で地中に潜ることによって恐竜の攻撃を避けて細々と生き延びてきた。哺乳類が一気に拡大進化したのである。新生代における環境の大変化によってもその哺乳類もネズミのような生命種からより高度の生命種に変化して、ついには人類を誕生させたのである。
このような環境の大変化を起こす原因は何であろうか。それは、小惑星の地球への衝突である。中生代の終わりの6500万年前には直径 10km相当の小惑星がメキシコのユカタン半島に落下した。その落下地点には直径180kmものクレータが作られ、1991年に地中に埋まっているのが発見されている。
小惑星衝突があると、直接的な災害に加えて衝突によって巻き上げられた微粒子が太陽の光を隠し、全世界が零下になり、食物生産が止まり、生物種の多くは滅びた。次には、吹き上げられたガス中に含まれている二酸化炭素ガスによって温暖化し、世界中が灼熱地獄となる。このような環境の大変化に生き延びた生命種のみが、次の時代の空いた地上の空間で大きく進化できるのである。
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