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講 演 | ||
国際宇宙大学夏期研修の参加報告 | ||
梅原広明(通信総合研究所) | ||
私は、6月29日から8月31日までの約9週間にわたり、国際宇宙大学2002年夏期研修 (International Space University, Summber Session Program 2002) において、宇宙開発についての研修を受けてきました。私自身は、所属元である通信総合研究所からの派遣として参加してきましたが、会期中にときどき、日本スペースガード協会の活動を紹介する機会があったことと、スペースガードの促進を考える上で、JSGA 会員の方々と情報や経験を共有するとよい部分があるのではないかと思い、この場を借りて研修の報告をさせて頂きます。 私達人類は、確かにこの地球上にいます。そして、その存在は親から子、子から孫へと永遠の過去から永久の未来まで続いているように思えます。しかし、科学の発達により、その存在には始まりがあり、終わりがあることが示されてきています。
国際宇宙大学は、1987年に当時米国マサチューセッツ工科大学の修士学生3名により創設されました。創設者 P. H. Diamandis, T. B. Hawley, R.D. Richard は、宇宙の研究・探査・開発を通じ、全人類の利益のためにより平和的で繁栄した将来を目指してISUを設立しています。この理念のもと、学際的 (Interdisciplinary) 、国際的 (International)、異文化交流 (Intercult ural) という3つの I を基本方針として宇宙開発の人材育成カリキュラムを編成しています。
ISUのカリキュラムは2種類あります。一つは、私が参加した夏期研修 (Summer Session Program, 以下SSPと略記します) で、もう一つは、1年間の修士課程コースです(といっても、日本ではこの課程を修士号として認められません)。夏期研修は、毎年、開催場所を変えて行なっています。今回は、米国カリフォルニア州ポモナにあるカリフォルニア州立工芸大学で行なわれました。昨年はドイツのブレーメンでした。過去に一回だけ日本で開催されていて、それは、北九州にて1992年のことです。SSPにおける特色の一つと して、毎年、 様々な専門分野のみならず、様々な所属環境(学生、事務職、研究職等)の参加者が集まってきます。今年も例外ではなく、参加者数99名のうち、学生は26%, 若手の業務従事者は33%, マネジメントなどにも携わる中堅の業務従事者は41%で、所属環境の多様さを示しています(写真1)。学生の場合、各自の研究を深め、同時に修了後の進路を模索することを目的にすえている場合が多く、業務従事者は自身に再教育を施すとともに、個人として人的ネットワークを広げることを目的としている場合が多いようです。
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180KB 写真1 プログラム参加者の正装あるいは民族衣装を着ての集合写真。初日に撮影された。 |
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専門分野の割合は、工学(航空宇宙、制御、デザイン等)が60%と半数以上を占め、物理科学(天体物理、天体力学、物性物理等)が18%、政策・法律が8%、生命科学が5%、 社会科学が4%、経済・ 経営が3%、教育(教師)が1%でした。いわゆる理工系と呼ばれる工学、物理科学、生命科学の従事者は8割を超えています。しかし、後述する各カリキュラムにおいて、宇宙開発を通じた国際協力について激しく議論する場面が多く、欧米からの理工系分野の参加者が身につけている学際的な知見に驚かされました。なお、参加者の出身国数は30ヶ国と少なくはありませんでしたが、中国からの参加予定者が全員、米国への入国が許されなかった等の理由で、今年は、アジアからの参加者が例年より少なかったそうです。 前半の約4週間は、講義が中心になります。宇宙工学に限らず、宇宙物理、宇宙生命科学、宇宙ビジネス、マネジメント、社会科学、宇宙政策と宇宙法、ミッション デザイン等の講義が、朝から昼食と夕食をはさんで夜まで続きます。また、これらの講義内容にわかれた「専攻」に各自が所属し、それぞれの専門に特化した課題を与えられ、セミナーやワークショップを行ないます。大学側からは、この専攻の選択においては、英語力に問題がなければ、自分の専門分野とは異なる専攻に所属することを勧められていました。私は、英語での聴き取りが思わしくないにもかかわらず、専門外の「宇宙政策および宇宙法専攻」を選んでみました。
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