理事長あいさつ

2021年6月

理事長 奥村真一郎

 

 この度、白井正明前理事長の後を引き継ぎ、四代目の理事長に就任いたしました。
地球に衝突する可能性のある地球接近天体を発見・監視し、これらの天体に関する研究や普及活動を行い、天体衝突による被害を最小限にするための活動を「スペースガード」(近年では「プラネタリー・ディフェンス」)と呼んでいます。
 このような活動の推進を目的として、日本スペースガード協会は1996年10月に任意団体として発足し、1999年には特定非営利活動法人へ移行、本年で25周年を迎えます。その間、初代理事長である故磯部琇三氏の尽力により美星スペースガードセンターの建設を実現、現地で観測スタッフを雇用し、毎夜、地球接近天体やスペースデブリの発見・監視・追跡観測を遂行してきました。また関連する研究活動や教育普及活動も精力的に進めてまいりました。
 今回は日本スペースガード協会の発足後初めて、現地の観測スタッフ経験者が理事長職に就くことになりました。その利点を生かして現地スタッフと執行部との連携をより密にし、これまでの活動で培った経験を生かし、良いところは伸ばしながらも変えるべきところは変え、協会の活動をさらに活性化させたい所存です。
 2021年6月現在、地球に接近する小天体は26000個以上が発見されておりますが、約6550万年前に地球への衝突により恐竜絶滅の要因になったとされる直径10kmほどの大きさの地球接近天体についてはすでにほとんど発見・把握されているため、今のところ地球への衝突の心配はほぼありません。一方、2013年にロシア・チェリャビンスクへの隕石落下により1000人以上のけが人が発生しましたが、この時落下した直径20m程度の小天体は発見されている100倍以上の数が存在すると考えられています。このような小さく発見の難しい地球接近天体をいかにして検出するか、他機関とも協力して観測手法の研究を進めています。発見観測だけにとどまらず、将来の天体衝突回避につながるように地球接近天体の物理的性質の解明にも取り組んでまいります。また教育普及活動やスペースデブリの観測的研究についてもこれまで以上に注力し、災害的な観点での研究活動にも取り組む所存です。
 このような現状の当協会のさらなる発展充実とスペースガード(プラネタリー・ディフェンス)に関する活動に際し、皆さまの一層のご支援とご協力をお願いいたします。