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今月のイメージ-1
「進化」という言葉ほど広く使われ、誰もその意味を理解していると思い、
しかしそのために自然現象の正しい理解に混乱をきたしている言葉もめずらしい。広辞苑の一部を
引用させていただくと、 『1. 進歩し発展すること。2.[生]生物が世代を経るにつれて次第に変化し、
元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと。その課程では体制は概して複雑化し、
適応が高度化し、また種類が増す。ダーウィンによれば「変化を伴う由来」。3.[社]生物における
進化の概念を社会に適用した発展の概念。社会は同質のものから異質のものへ、未分化のものから分化
したものへ進むとする。』 とある。これを見ると、「進化」とは進歩することであり、それは適用の高度化に
向かって斬新的に進み、組織は複雑化する。」と要約できそうである。これはわれわれが日常「進化」という
言葉を使うときイメージすることであり、われわれの周囲を見回しても、ものごとはこのように変化している
ように思える。しかも、これは生物界の現象に由来している言葉である。変化の要因として自然淘汰という
概念が加われば、「進化」という言葉を完璧に理解したと確信することになる。
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問題はこれほど誰でも納得できる「進化」という言葉の意味が、実は生物界には 適用することができない、ということにある。生物界に起こっている進化は、「高度の適用を可能にする 複雑化が徐々に進む進歩」ではなく、「変化(種の分化)は偶然起こり、ローカルな環境への適合性が 生存には影響するものの、複雑化、高度化といった方向性があるわけではない」のである。 チャールス・ダーウィンにしても、生物進化の中に進歩という概念が含まれないことは最初から強く意識して おり、進化(evolution)という言葉を使うことを避け、広辞苑にも記載されているように、変化を伴う 由来(descent with modification)と呼んだわけである。これまた、その真意を理解するには難しい言葉であるが。 |
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