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特集!地球に接近する小惑星 | |
小惑星の地球接近情報をどのように理解すればよいか | |
理事長 磯部しゅう三 | |
今年になって地球近傍小惑星(NEA)の発見が大きく増えてきた(表1)。それらには、地球にかなり接近するものがあったり、近い未来に地球に衝突する確率があるものがあったり、800年余り先に衝突確率がこれまでのNEAの中では最大であったり、接近時に9等級にも増光するものがあったりと話題性のあるものがいくつもあった。そして、それらがマスコミで取り上げられてきたが、問題の本質を理解してもらうのには不十分な情報しか与えられないケースが多く、一般の方々の誤解を招くことが多かった。この傾向はイギリスとアメリカのマスコミで強く、新聞の一面を飾ることが多かった。日本では幸い、日本スペースガード協会の名前が知られるようになり、マスコミの方々の何割かは当協会に質問され、正しい情報を理解してくださったので、混乱させるような報道は少なかったのは幸いであった。 ここでは、それぞれの接近のケースを例にして、このような小惑星の地球接近情報をどのように理解すればよいのかを示したいと思う。 |
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7KB 表1 1980年以降に各月毎に発見されたNEAの数の変化. (吉川氏より) |
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1 なぜNEA検出数は増えているか
話題性のあるNEAの数が多くなっているのは、NEAの検出数が増大しているためである。まず表1を見てみよう。1960年代までは10-20年に1個程度の検出しかなかった。NEAは全く偶然に見つかったのである。1970年代からE. シューメーカーとE. ヘリンがパロマ山天文台の50cmシュミット望遠鏡による掃天写真観測を系統的に始めたので、NEAの検出数は1年に5〜10個程度に増大した。そして、アリゾナ大学のT. ゲーレルが中心になって、スキャンニングCCDカメラ(注1)をキットピーク天文台にある非常に古い91cm望遠鏡に取り付けて観測(Space Watchプロジェクトと呼ばれる)を始めたのが1989年で、その年から1年に30〜50個程度の検出がなされるようになった。1994〜1996年にジェット推進研究所(JPL)のE. ヘリンがハワイ・ハレアカラ山頂の1m望遠鏡での観測(NEATプロジェクトと呼ばれる)を開始し、また、ローウェル天文台のE. ボーウェルが50cm望遠鏡を使って観測(LONEOSプロジェクトと呼ぶ)を始めた。これらもCCDカメラを使っており、NEAの検出に貢献した。しかし、1998年になり、リンカーン研究所のG. ストークスが最新式の高速読み出しCCDカメラ(注2)をニューメキシコ州のアメリカ空軍にある1m望遠鏡に取り付けて観測(LINE- ANEAR)を始めた。このCCDカメラは非常に効率の良いものであったので、検出数が再び増大し、1年に100〜200個にもなった。
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2001〜2002年にはLINEAR2号機に加えて、JPLのチームがパロマ山天文台1.2mシュミット望遠鏡にCCDカメラを取り付けた観測も始めたので、検出数がますます増大し、2002年には1年間に200個を越えるNEAが検出されると期待されている。直径1km以上(注3)のNEAでは、このような増加が続かないことに注意する必要がある。このように大きなNEAは1000〜1200個位存在していると評価されているが、そのうち現在までに発見されているのは600個余りである。仮に総数が1,000個であるとする。検出個数800個、900個になると残りのわずかなNEAを検出できる可能性はどんどん小さくなってくる。 | |
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