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一方、100mより大きいNEAは100万個近くあり、まだほんの一部しか検出されていないので、当分は検出用望遠鏡群の能力に比例した検出個数が続くであろう。100mサイズのNEAの検出の問題は主に望遠鏡の口径にある。現在のNEA検出望遠鏡はSpace Watch II号機の1.8mを除いて、口径1m程度である。この場合、露出を1分程度かけると20.5等級位までのNEAを検出できる。 露出をもっとかけると、もっと暗いものまで検出できそうであるが、NEAは天球上で動いているので、露出時間を長くすると筋状に伸びた像になり、光量の蓄積ができなくなり、それ以上暗いものは検出できなくなる。この問題を解決する主な方法は、望遠鏡の口径を大きくすることである。イギリスの科学大臣のレポートで口径3mの望遠鏡を建設しようと提案しているのはこのためである。
20. 5等級まで検出できるとすると、直径1km以上のNEAが木星の軌道近くまで達していても検出できるので、早期に全検出できる可能性が大きくなる。現在 LINEAプロジェクトは 19.5 等級までの検出を目標としているので、直径1km以上のNEAの全検出は最後の段階でスローダウンするであろう。つまり、NEAが地球に一定以下の距離まで近づいた時にしか検出できないのである。直径100m以下のNEAなら、もっと近づかなければならなくて、直径10〜50mでは、地球に本当に接近した時にしか見つからないことになる。
ここまで書くと、なぜ近年NEA問題がマスコミを賑わしているかの一端をご理解いただけたのではないかと思う。
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2 “見えない方向”から来るNEA
吉川さんの表を見ると、今年になって(8月まで)地球のそばをかすめていったNEAは8個もある。そのうち2002EM7がマスコミに取り上げられ、2002MNが地球に12万km(これまでで2番目に近い接近)まで近づいたので、マスコミで大きく取り扱われた。なぜこのような問題が起こるかを示すことにする。
2002EMは、2002年3月12日にLINEAR望遠鏡によって発見された。3月8日には地球から463,000km(月の距離の約1.3倍)に最接近していた。その大きさは60m余りで、地球に衝突していれば、アリゾナの隕石孔のようなクレータを作り出し、周辺100km近い範囲では、壊滅的な被害を受けたであろう。
2002MNは、より衝撃的であった。それは、2002年6月17日に、同じくLINEAR望遠鏡で発見され、6月14日には地球に12万kmまで接近した。この接近距離は、1994XM1の10.5万kmに次いで2番目に近いものであり、その大きさが100mもあって、地球衝突があれば、1908年6月30日に起こったツングースカ爆発より、はるかに大きく、東京都心部に落ちれば関東平野がほぼ全滅するほどのものであった。1994XM1は10.5万kmまで接近したにもかかわらず、あまり騒がれなかったのは、直径が10m程度と小さく、仮に地球に衝突しても上層大気中で爆発して、地表にはほとんど影響しないこともあった。
2002EMと2002MNが騒がれた(特に欧米のマスコミで)のは、その発見が最接近の日より数日も後であったためである。もし衝突軌道にあれば、誰も気づかないまま突然大爆発となるのである。その理由は、これらのNEAが太陽方向に近いところから、つまり、昼間に接近してくるためである。この問題を避けるためには、人工衛星にLINEAR望遠鏡のような高性能望遠鏡を搭載して観測することである。人工衛星上からは、太陽のある方向さえ見なければ空は全体に昼間でも暗いのである。一台の望遠鏡を人工衛星に載せて探査しただけでは問題は残る。一台の望遠鏡が全天を掃索するには1〜2ヶ月もかかるのであるから、観測されずにすり抜けてくるものもある。何十台もの望遠鏡を人工衛星に載せて連続的に観測していなければ、2002EMや2002MNのようなケースがまだまだ起こり得るのである。
しかし、よくよく考えてみれば、数日後に地球上の大都市に小惑星が衝突するとわかってから何ができるのであろうか。一部の人だけなら衝突地点から遠い所に逃げ出せるであろうが、残された大部分の人はパニックを起こすだけになってしまう。
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