ASTEROID
The Journal of Japan Spaceguard Association
Vol. 11, No. 4 November 2002, Founded in May 1992.
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これらのように、米国の厳しい輸出規制があるにもかかわらず、国際協力により成功を収めている宇宙プロジェクトは存在しています。我々が最終的に着目したものは下記4例でした。
- 国際宇宙ステーション
- シーローンチ
- ジョイント・ストライク・ファイター
- サリー・サテライト・テクノロジー社(Surrey Satellite Technology Ltd., 以下 SSTL と略記)
国際協力のもと、宇宙プロジェクトを成功させるために欠かせないのは、まず、政府による援助が挙げられます。ただ、それ以外にも例えば、モジュール単位による協力を行なうことで設計技術の移転を防ぐなどのように、協力体勢を工夫して輸出規制から逃れることも可能なことでしょう。経済的な利益と国家安全保障とのバランスを保つにあたっては、国内産業に不必要な規制を課すことは避けなければなりません。長期的な国際プロジェクトにおいては、世界的に既に使用されている技術内容を理解することで、規制対象を狭めることができることでしょう。前例が大切になります。この際、産業レベル、国内レベル、地域レベル、国際レベルの輸出規制と抵触しな いような 配慮が必要です。輸出規制に対策を講じて国際プロジェクトから得られる利点としては、コストおよびリスクの共有、マーケットの共有、世界トップレベルの技術の集結、プロジェクトの持続性、MTCR に対する対応強化などが考えられます。

本専攻は最終的に10名が選択し、上記の調査研究を行ないました(写真4)。10名のうち、法律を専門にしている参加者が5名、その他の5名はみな宇宙工学関係に従事しています。しかし、工学に従事している私以外の参加者は、法律を専門とする参加者と対等に調査や議論に加わっていました。私は前述したように、英語力不足と専門知識不足の2つの問題を抱えて参加することでどのような結果になるかを試行したわけです。その結果、学生時代を思い出して、というと響きはよいのですが、実際は 本当に 云々うめきながら日々を送ることとなりました。ただ、同じ参加者から基礎知識や激励を受け、微小ではあるが、国際協力・技術移転の戦略について知見を修得することができました。
また、調査の最終段階で SSTL が推進する国際協力ミッションの特に技術面を調査する機会を得ました。それにより、技術的な知見を専攻内に還元させることができ、私としては、その技術推進をなぜSSTL が成功させるに至ったかという経営戦略を大域的に把握することができました。しかも、このSSTL の調査については、次節 DP2 での活動においても最終段階で鍵を握る存在となりました。また、スペースガード施設の国際ネットワークを広げる参考になるかもしれないと思い、SSTL が進める国際協力の内容を紹介します(写真5)。
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写真4
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写真5
宇宙政策および宇宙法専攻のワークショップ風景。著者が Surrey Satellite Technology Ltd. (SSTL) による国際協力の事例を調査し報告した。 SSTL が技術移転を行なっている相手国。大きな国旗で示した7ヶ国は、2002年〜2004年の間に実施される災害監視編隊配置プロジェクト (DMC) の提携国あるいは提携予定の国を示す。
Surrey Satellite Technology Ltd. (SSTL) は、英国Surrey大学の研究室から発したベンチャー企業です。SSTLでは、様々な国における国営機関や大学などと提携をして超小型衛星の市場を拡大しています。なお、ここでいう超小型とは、数十kg くらいの重さのことです。1995年にはフランス国防省にCERISE 衛星を売却し、チリ空軍には FASat を売却し、技術提携を進めてきています。1997年には NASA や米国空軍と、2000年には英国国防省の QinetiQ と提携しています。
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