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また、SSTLは、宇宙開発における発展途上国などに技術移転を積極的に進めています(写真6)。その手順は、だいたい以下のようです。もちろん、相手国との関係を熟慮しながら、慎重かつ柔軟に対応しています。まずは、顧客に対し、Surrey 大学において修士号・博士号に相当する教育を施します。次に、顧 客先に地上局を設営します。そして、衛星を提供します。一号機はSSTL において製作した後に売却するのですが、二号機は顧客先で製作するように指導します。このようにして、顧客は超小型衛星をもとに自国内で独自に宇宙開発を進めることができるわけです。SSTL にとっても、これらの技術移転が直接的な営業活動であるばかりでなく、世界各地に SSTL 関連の地上局が設営されることになるため、低軌道衛星における通信ネットワークが拡充することになり、世界規模でのデータ収集が可能となります。 | |
97KB 写真6 |
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SSTL が技術移転を行なっている相手国。大きな国旗で示した7ヶ国は、2002年〜2004年の間に実施される災害監視編隊配置プロジェクト (DMC) の提携国あるいは提携予定の国を示す。 |
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これら技術移転の集大成として、SSTL は災害監視編隊配置 (Disaster Monitoring Constellation, 以下 DMC と略記します) という国際プロジェクトを2004 年までの計画で実行しています。これは国際連合の宇宙空間平和利用委員会 (Committee on Peaceful Uses of Outer Space, COPUOS) が主催する会議である UNISPACE III (第3回UN Conference on Expl- oration and Peaceful Uses of Outer Space, 1999年) におけるレコメンデーションによって始まったプロジェクトです。様々な発展途上国に上述の技術移転を施し、最終的にはそれら各国が所有した超小型衛星を高度 700km くらいの軌道に配置し、災害などの継続監視を行なうシステムです。このプロジェクトは SSTL にとっても参加発展途上国にとっても宇宙開発を推進するうえで利益があるように図られています。
さて、SSTL は軍機関とも提携しながら、DMCのように発展途上国とも技術移転を施しています。通常ならば、機密保持の理由などから、両立は困難なはずです。しかし、SSTL
の場合は、技術移転をする衛星は、安価で性能も劣るものに限定しています。例えば、DMC
の場合、地上解像度は 32m と粗くなっています。SSTLでは、本来、1mを切る解像度の撮影が可能なのにもかかわらずです。また、軍機関との提携においても、科学ミッションに限定しています。このような明確な境界を定めているため、宇宙技術の移転が難なく行なわれています。なお、SSTL
にとっての問題点は、発展途上国に市場を求めているため、各国からの収入が少ないことです。もっとも、国際貢献をしているため、英国政府から賞金を得ており、それも収入源となっています。SSTLの経営戦略は、宇宙開発の典型である巨大産業からほど遠いのですが、理念的にもまた経営的にも尊敬を集めるような経営戦略をたてています。このように十分に練られた戦略のもとでは、技術開発に携わっているスタッフの士気も必然的に高まるのではないかと思います。
デザインプロジェクトについて
デザインプロジェクト DP2では、人類の健康を向上させるために宇宙技術を利用するようなプロジェクトが課題の基本理念として挙げられました。具体的には、現存するあるいは提案されている人工衛星からの画像や通信設備を用いて、世界的な健康問題を解決する一助となる手段を供給するための計画を行なうことが課題とされました。今日入手可能な膨大な量の衛星画像や、地理情報システム
(GIS) のような画像解析ツールを用いて、情報を生成し、科学者、政策立案者、報道機関、そして一般国民に配信するための独創的で実務的な道筋を示すことが、本課題を選択した者によって構成されるチームに期待されています。また、最後に作成される報告書は、関連する機関に提案する内容であることが課せられています。
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