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このような命題を受け、DP2を選択した参加者53名は次のミッション・ステートメントを設定しました。「我々のミッションは、宇宙技術を用いてマラリア撲滅をめざす国際的な戦略を開発・促進させることである。」ミッションを構築するにあたって、まず感染症が注目され、その中でも危険度が高く、また、リモートセンシング等の宇宙技術を適用することができそうな対象としてマラリアを選定しました。なお、プロジェクト名も据えられ、HI-STAR(Health
Improvement th- rough Space Technologies and Resources) と称されることになりました。
プロジェクトは数週間という短期間で行なわなければならなかったため、本来は流れ作業で行ないたい部分もあったにもかかわらず、5グループに分かれ同時進行で調査研究を行ないました。一つのグループは、既にマラリア対策を行なっている国際プロジェクトについて検索、調査がなされました。
- Roll Back Malaria
- The Special Program for Research and Training in Tropical Diseases
- Multilateral Initiative on Malaria
などが調べられました。また、別のグループによる調査からは、既に宇宙技術をとりいれているマラリア対策のプロジェクトも次のように存在することがわかりました。
- The Center for health Application of Aerospace Related Technologies
- Mapping Malaria Risk in Africa
などです。しかし、これらは依然パイロット的な研究にとどまっており、実社会での要求水準を満たしていません。さらに別のグループにおいて、プログラムの促進を行なうには何が問題であるのかを研究しました。費用試算を行なった結果、地上施設(データ収集解析センター、通信局など)に実現をはばむくらいの経費が必要であることが判明しました。
これらを解決する一手段として、マイクロ衛星の活用がとりあげられたのですが、時間的に最終報告を提出しなければいけない時期の直前に構想され始めたため、補遺による掲載となりました。また、我々は調査対象の制限を設けていて、あくまでも実存する宇宙技術のみにスポットが絞られていました。現在のところ、マラリアの状況を直接的に観測することのできる超小型衛星システムは現存しないため、プロジェクトの制限に合致しなかったことも、補遺になった理由の一つです。
私は上述のように、宇宙政策及び宇宙法専攻において SSTL の超小型衛星システムによる国際協力について調査していたため、この DP2 においても急遽、調査を始めることになりましたが、上記の理由でプロジェクトの本筋には入ることができませんでした。このとき私は、プロジェクトを充実させるためには、全体の期間をより長くした方が望ましいのではないか、と考えていました。しかし、一連のSSP を終えて振り返ると、期間は2ヶ月間というのがちょうど良いとも思っています。なぜなら、期間がより長くなると、中堅として働いている人々の参加が難しくなるからです。また、ISU は、プログラム終了後に意義がある、という話を参加する前に国内でききました。これは、人的ネットワークを活用することができるから、という意味もあるでしょうが、それに加え、専攻やデザインプロジェクトにおける短期の調査結果から発展させた形で個人があるいは複数人が集まり、自由に研究・開発・促進を進めることができる、という意味もあるのではないかとも思いました。
実際、私も次のような検討を計4名で進めることになりました。SSP の最中に、いくつかの技術動向が調査されていたのですが、その中で
(1) 地上音感センサー
(2) 低価格超小型衛星の通信ネットワーク
という上記2点の技術を融合させて、マラリア撲滅のミッションが可能であるかの検討を行なう予定です。なお、(1) に関してですが、蚊の種類、性別、数を検出することができる光学および音感センサーについて調査しました。これらのセンサーは既にカナダで開発・試験が行なわれています。しかし、市場向けに生産されてはいません。そこで、センサーの大量生産を行ない、地上に分散配置させ、センサーからのデータ群を人工衛星によって収集し、地上局に配信し、蚊の状況を解析するという構想をうちたてました。また、(2) の調査において、構想の鍵を握る通信システムでは、マイクロ衛星群を用いて、VHF あるいは UHF バンドを用いた記憶転送通信法 (store-and-forward communications) が候補として挙げられました。そうすることで、地上局が安価に設営されることが期待されています。これらの構想のもと、必要経費を関連企業に問合せ概算しながら、実現可能な方策になるよう企画の改良を施す予定です。
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